第19話:戦いの後の飯テロ天国(肉料理編)

 ……

 ……


 こんな夢を見た。

 私が元いた時代での出来事。


 冬になると大体の木は枯れてしまうが、一種類だけ年中葉を生やしているものがある。

 『厚葉樹(こうようじゅ)』という木の名前で、葉が厚いために脆くなることがないという性質の模様で、葉っぱ一枚一枚が鋼鉄のように鋭くて固い。

 人はそれをナイフや包丁代わりに使うことを基本としている。


 もしも、それを超循環の力で使えるならば、葉自体を弾丸として飛ばし、ボウガンのように強力な物理攻撃に出来るのではないかと思った。

 私のようにエイムが悪くても、当たればなんとかなるという性能なので、もしも過去の時代に同じ木が生えているなら、いくつかバックの中に入れておきたいところ。


 まあ、切れ味が鋭いから、革の鞄に入れようものならいつの間にか穴を開けて地面に落ちている場合も多いので、専用の固くて軽いカバンを用意しなくてはいけないけれど。


 今度、メルボルンの子どもたちにでも聞いてみようか。


 ……

 ……


 ルーミルの家


 目を覚ますと、そこは私が最初に過去に連れてこられたときに見た天井と同じ光景だった。


「ああ、リヌリラ。目を覚ましました?」

「覚ましました。相変わらず起床直後は心臓部分がチクっとするけど」


 もしも誰かに致命傷を負わされたら必ずここに戻される法則なのだろうか。

 ある意味都合の良い仕組みな気もする。


「……私、どれくらい寝てたの?」

「十時間位でしょうか……辺りはすっかり真っ暗になってしまっています」


 ルーミルが窓を指差すので見ると、確かに外は真っ暗になり星空がキラキラと輝いている。


「時刻は二十三時を過ぎていて、子どもたちは寝る時間。大人たちはおつまみ片手にお酒を飲む時間」


 ルーミルはソファに掛けながら、ビールのようなものを片手に鶏肉の唐揚げをつまんでいる。

 ぐぅぅぅぅ……


「……お腹空いた」

「ここに来てからまだ何も食べていないですからね。この唐揚げを一緒につまみませんか?」

「食べる。お肉大好き!」


 ベッドからバッと起き上がり、一目散にテーブルの唐揚げに手を伸ばす。

 どうやら揚げたてのようで、素手で触ると激熱な模様。

 私が熱がっているところを見たルーミルは、ふふっと笑い、フォークを出してくれる。

 私はそれを使い唐揚げを刺して頬張った。


「あぁ……お肉。カリッカリに揚げられた鶏のから揚げさん。おいしい……」

「岩塩の粗塩を使って味付けしていますので、あっさりしながらもしっかりとした味わいでしょう……はむっ……」

「肉汁の全てに旨味が濃縮されていて、いくら食べても食べたりない気分になる」

「ああ、これは……鶏肉を追加しましょう。リヌリラは随分とベコなようですね」


 私が勢いよく唐揚げを消化している姿を見て、ルーミルはすかさず補充用に鶏肉を取り出す。


「今のメルボルンは食用家畜を多く世話していますので、どんどん食べてくださいね。戦争の疲れは食事から。たっぷり食べられる準備はできています」

「おいしい……おいしい……」


 体の疲れで胃が求めるようにエネルギー源を欲している。

 野菜を食べろ? 何を言っている?


 確か一昨日、元の世界でピザという料理を食べた記憶がある。悪魔と知る前のニコニコとした表情のハナが作ってくれた西洋の料理。あれの味付けにはケチャップというトマトピューレのような味付けがされているという。つまりケチャップ=野菜を食べたということになるから、来月くらいまでは野菜は摂取しなくても良いことになる。


「焼き鳥、照り焼き、油淋鶏。二度も体を再生するために力を使っていますから、たくさん食べて元気になってください」

「うわーやったー!」


 次々と出される肉料理の数々。

 無我夢中になり私は胃の中へと放り込んでいく。

 私の口の検問は、今どんなやつがやってきたとしても、肉なら無条件で入国を許すだろう。

 野生を感じ、肉を食らう。

 料理が出ては食べ、出ては食べを繰り返す。

 果たして何キロ食べただろうか。

 体重の増加が怖いところだが、今はそんなことは気にしてはいけない。


 自分の体型に見合わないレベルで大量摂取をした後に、ようやく体が落ち着きを見せた。

 ルーミルの作る料理はとても美味しい。

 強くて素敵、料理も出来る。


 素敵な奥さんになれそうな気がする。

 今は一人暮らしをしているようだが、良い人はいるのだろうか。


 今度、それとなく聞いてみよう。


 ……

 ……

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