俺と娘のありふれた日常
甲乙丁
0ヶ月 産院から
突然のことでした。
ある事情から、俺は生まれたばかりの我が娘を一人で育てることになりました。
そのあたりの経緯を説明しますと、それだけで別の話になりそうなので、ここではしません。
俺は早くに両親を亡くし、親族とも疎遠、仲の良い友人というのもいませんでした。つまり誰かに頼るという選択肢が考えられませんでしたので、とにかく一人でやるしかない、と子育てを始めました。
娘の名前は、みく(仮称)と言います。
生まれた体重は3000グラムとちょっと。身長は48センチくらい。ごく平均的な体格です。
産後約一週間を産院で過ごし、すぐに子育てがスタートしました。
これまでは産院にて、難しいときは助産師さんの手を借りながらミルクやおむつ代えなどをしていましたので、なんとなくこれからもサポートし続けてくれるんじゃないか、などと根拠のない甘い考えを抱いていました。
産院を出ると、もう一人です。
家に連れて帰るため、初めてチャイルドシートに小さな娘を乗せたときには、正直嬉しさよりも不安な気持ちでいっぱいでした。
車を運転中も、チャイルドシートがきつくないかとか、首が締まってないかとか、そんなことばかり気になりました。
赤ちゃんの首は、いわゆる首がすわっていないという状態で、かくんかくんと少しの衝撃でも倒れてしまいます。
加えて、車前方に対して、後ろ向きに乗せるようなシートでしたので、運転席からはチャイルドシートに乗った娘の様子がよく見えませんでした。
途中で何度か車を止め、娘の状態を確認しながら、なんとか家に着きました。これほど緊張し、集中力を使った運転は初めてでした。
娘は車の中でずっと眠ってました。小刻みな揺れが心地良かったのでしょうか。
眠っていたら眠っていたで、ちゃんと起きるかどうか、やたらと不安になります。
俺は眠ったままの娘を抱えて運び、すぐに布団に寝かせました。ベビーベッドは転げ落ちる心配があったり世話がしづらいという情報をネットで見たので、あえて布団にしました。
娘が寝ている間に、急いで産院で購入したオムツ(パンパース新生児用)と粉ミルク(アイクレオ)を車からおろし、一通り配置しました。
これで、ようやく俺は落ち着かない不安だらけな気持ちから一息つけました。
粉ミルクは、ポイントをたくさん集めると、生まれたときの赤ちゃんと同じ重さのテディーベアを作ってもらえるようでした。これをもらえるくらい、元気にいっぱい飲んで欲しい、と思いました。
娘は、だいたい2時間おきに泣いて起きます。
起きたらミルクを飲ませます。
泣いているので出来るだけ早く飲ませてあげたいですが、温度調節を間違えて熱々のミルクを作ってしまうことがありました。赤ちゃんは熱々のミルクではやけどをしてしまうので、体温ほどに調節して飲ませなければなりません。これを調乳と言うそうです。
哺乳瓶を流水にあてたり、水の張ったカップにつけたりすると、温度が下がりやすいとネットにありました。
娘はその間ずっと泣きながらミルクを欲しがっています。
早く慣れなければ、と思います。
産院から連れ帰ってまもなく2時間です。
娘が起きるまで、きっともうすぐです。
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