ドラゴンキラー

第1話

この世には二種類の人間がいる。

竜人（りゅうひと）と猿人（さるひと）だ。

俺は猿人。名前はラディアン。好きに呼んでくれ。ただし、俺のことを猿だの何だのとは呼ぶんじゃない。俺は猿じゃなくて人だ。

この世はとかく争いが絶えない。互いに相容れず、共に生きられず、いつだってどちらかがどちらかをぶっ殺したいと考えている。

俺たち人類がまさにそうだ。でも仕方ない。

我が家に勝手に侵入してくるやつらを、あんただって野放しにはできないだろ？

もちろんこの町にも争いがある。というか、この町が抱えている争いは、この世界のほかのどの町も抱えている類いの争いだ。

竜人と猿人。俺たちは互いに互いが侵入者だと叫んでやりあっている。

だから、昨日の夜も同じだ。仕方のないことだった。あの竜人が俺を猿だのなんだの難癖をつけてこなければ、俺だってブチ切れたりはしなかった。テーブルの上にあった瓶ビールをあいつの顔面に叩きつけたりはしなかったんだ。

俺はその後、別の竜人に強烈な尻尾の一撃(尻尾。笑える。俺たちには尻尾なんてないのに)を後頭部に受け、泥酔したまま昏倒し、バーから病院に直行する。幸いなことに俺がビール瓶を叩きつけた竜人と俺用に救急車は二台きた。お陰で、お互いに寝首をかく隙がなかったわけだ。

俺は自分の名誉のために行動できたし、その後、無様に床に這いつくばることになったが、後悔はしていなかった。後悔したのはそのあとだ。

俺と件（くだん）の竜人は病院の病室が一緒だったのだ。