雨降りの休日
おはようございます。身体のあちこち(主に腰)が痛かったり怠かったりする私ですが、現在良裕さんの腕の中で昨日抱かれている時のことを思い出し、彼に背中を向けながら恥ずかしさに悶えています。
うう……なんであんなこと言っちゃったんだろう……。
確かに喜んでくれればいいなと思ったし、喜んでくれたみたいなんだけど、まさかそのあとベッドで本気のドSのスイッチが入って、激しくなるなんて思わないじゃないか。どんだけお仕置きしたかったんだ!
しかも、どんなことが気持ちいいとか言わされるし、言わないとずっと繰り返されるし……。全部気持ちいいとか、自分からほしいとか一緒に気持ちよくなりたいとか言っちゃう私って……!
そんなことを思い出して悶えていたら、良裕さんの手の動きや唇と舌の動きを思い出すだけで、子宮のあたりからゾクゾクしたものが這い上がって来て身体が震えて声が出そうになる。……自分がどんどん淫らになっていっているようで、良裕さんに嫌われたらどうしようって怖くなる。
『恋ってさ、彼のことを思うだけで毎日が嬉しくて、楽しくて、幸せなの。会話なんかしたら舞い上がっちゃう。でも、切なくて、苦しくて、不安になったり怖くなったりもするのよね』
そう言ったのは、三年の付き合いを経て三年前に結婚し、海外に行った親友だった。その時は彼女の気持ちが全然わからなかったけど、今ならその気持ちがわかる。
「好きだよ……良裕さん……」
身体を少しだけ丸めて、小さな声で呟くと、ギュッと胸が締め付けられる。視線の先には私の腰に回された右腕と、胸には彼につけられた赤い華。
それを見てしまったせいか、良裕さんから与えられるモノを思い出してしまって身体が震えてくる。
「……っ」
思わず漏れ出てしまった声に、すぐ口を塞いで良裕さんの様子を窺う。彼はピクリとも動かずに寝息をたてていてホッとする。
(そう言えば、今何時だろう……)
首だけ動かして室内を見回したけど時計はなかった。仕方なく充電しっぱなしだったスマホを取ろうと身体を起こそうとしたら、うしろに引き寄せられる。
「あっ」
「雀……おはよう……どうした?」
「おはよう、良裕さん。時間が知りたくて……」
「待って……六時過ぎだな。七時半にアラームをかけてるから、もうちょい寝れるぞ?」
「もうちょっと眠ってたいから、手を離してっ」
自分のスマホを取って時間を見た良裕さんは、スマホを元の場所に戻す。
朝から抱かれるなんて、本当は恥ずかしい。でも、良裕さんにキスされたりしたら、それを喜ぶ私がいることも確かだし、もっと愛してほしいと思ってしまう。
『好きな人に抱かれることほど……ううん、両思いになった人に抱かれることほど、幸せで気持ちいいことはないんだからね?』
頬を赤く染めながら、そんなことを言った親友の顔を思い出す。
『変な性癖を持ってなければ、好きな人に抱かれて、体を開発されるのは……体を調教されるのは悪くない、って思っちゃったの。その時点で、私はこの人が本気で好きなんだ、愛してるんだ、だから彼が私を好きで愛して夢中で求めてくれるなら、好きなだけ抱かれようって決めたのよ。まあ、こんなこと思うのは私だけかもね』
この時は彼女が何を言っているのか、何を言いたいのか全くわからなかった。だけど良裕さんに抱かれるようになって、親友が言っていた意味がなんとなくわかるようになった。
良裕さんに抱かれるたびにその手に、その唇に、そして今も貫いているモノに敏感に反応する私の体は、親友が言うところの彼に開発された、調教された、ってことなんだろう。
……嬉しいような、哀しいような。
いや、私を抱いている時点で、良裕さんも私に夢中で求めてくれているって思っていいんだろうか。
だからといって、親友のところみたいに好きなだけ抱かれるなんてまっぴらごめんなんだけど、体が良裕さんの愛撫に反応しちゃうとどうにもならないわけで……。
結局は、朝から良裕さんに抱かれてしまった。
***
「……雨やまないね」
「そうだな」
終わったあと、シャワーを浴びたり帰り支度……いや、出かける支度? をしていたら、外からサーッと音がし始めた。何の音だろうとカーテンの隙間から覗いたら、雨が降り始めていたのだ。
ちょっと遠回りすれば動物園にいける距離だからとこっちに来たのに、これでは行けないからと諦めて、途中で買い物してから帰ることに。途中でファミレスに寄ってご飯を食べ、買い物をして帰って来た。
で、現在、良裕さんちで恋人座りをしながら彼の腕の中でまったり中なわけですが、雨が全然止まなくてお互いにちょっと憂鬱になっている。特に私は良裕さんのせいで余計に体が怠いし、腕の中にいるから温かいし、雨の日は眠くなっちゃう傾向にあるから今は非常に眠くてしょうがない。
「そう言えば、良裕さんに話しておかないといけないことがあったんだ」
「ん? どうした?」
「昨日の話の続きみたいなものだけど、二週間に一回の割合で実家に帰ってるから、毎週末に良裕さんと会うのは無理だからね?」
そう言った途端、一瞬だけ部屋の中の空気が張り詰めた。……なんで?
「まあ……雀ちゃんたら、俺を捨てるのねっ!?」
「誰が漫画とかドラマの女優みたいなことを言えと! むしろ、役柄的にそれは私の台詞だよね⁉」
「それはないな。先日のことでわかるように、俺は女に対する嫌悪感を未だに持っているし、それを感じさせないのは雀を含めたごく一部の人間だけだからな? だから、雀を好きになった俺がお前を捨てるなんてあり得ない」
良裕さんにそう言われて、先日のことを思い出す。あの人たちに対してすっごく嫌がってたもんね。
「そうでした。なら、私もあり得ないです。私も良裕さんが大好きだから」
「なら、なんで二週間に一回実家に行くんだ?」
「それはですね。簡単に話すと、今の会社に入る前にいた会社でいろいろあって、ストレスですっごく太っちゃって。精神的にも肉体的にもダメになってその会社を辞めたんだけど、変わり果てた私の姿を見た家族が心配して、連れ戻される形で一年半くらい実家にいたの」
「……」
「今の会社に合格した時にこのマンションに引っ越したんだけど、それだって渋々だったのを、最長で二週間に一回実家に顔を出すって約束で、引っ越しを許してもらった形だから、心配をかけたくなくて未だにそれを続けてるんだ。だから、良裕さんと会いたくないとかじゃないから、そこは安心してほしいな」
「そっか……」
なぜかホッとしたように私を抱き締める良裕さんに首を傾げるも、誤解をさせたくないから話せることはちゃんと話しておく。
「ならさ……いつかでいいんだけど……実家に行く時、俺も一緒に行っていいか?」
「え……?」
「今すぐってわけじゃないが、いずれは雀と結婚したいと思ってるからさ。出逢って五ヶ月……もうすぐ六ヶ月で、付き合い始めてまだ一週間だけど、俺は雀を手放す気はないから。だから雀……俺と結婚して、俺の唯一になってください」
良裕さんからこんなにも早く、そんなことを言われるとは思わなかったから、嬉しくて涙が滲んでくる。
「わ、私で……いいの……?」
「俺はお前じゃないとダメだからな。フラレたら一生独身決定だ」
「ふぇ……っ、私、も……良裕さんじゃないと、やだ……っ」
とうとう溢れてしまった涙に、良裕さんがタオルで涙を拭ってくれる。すみません、お手数をおかけします。
「泣くなよ……てか、なんで泣くんだよ」
「だ……って、嬉し……っ」
「そっか……。じゃあ、改めて」
恋人座りだったのをやめて私をソファーに座らせると、良裕さんは目の前で跪いて左手の指先を掴み、真剣な顔をして見上げてくる。その仕草と姿にドキドキしてしまう。
「園部 雀さん。俺と結婚して、俺の唯一になってください」
「はい……っ、寺坂 良裕さん、お受けします……っ」
物語の騎士のように、左薬指にキスをしてプロポーズされるなんて思っていなくて……。思わず良裕さんの言い方につられて返事をしたあと、目の前にあった彼の頭に抱きついた。下を見れば、彼が私を見上げている。
「雀……今度、指輪を買いに行こう」
「うん」
「お互いの実家にも挨拶に行こう」
「うん」
「同棲もするか?」
「それは、挨拶してから決めようよ」
「そうだな。あと、おっぱいが顔にあたってて気持ちいい」
「うん。……って、へ!?」
良裕さんに言われて、そう言えば頭に抱きついたんだと、今さらながら思い出す。
「ああああのごめんなさい今すぐどきますっ!」
「どかなくていいから。……あれか、これが『ぱふぱふ』ってやつか。いいな、これ……マジで雀のおっぱいは柔らかくて気持ちいい……」
「ちょっ、頭を動かさないでっ」
「やだ。このまま昼寝しよう……」
「えっ⁉ ちょっ、きゃあっ!」
ギュッと私を抱き締めるとそのまま立ち上がる。そして寝室に連れて行かれてベッドに寝かされると、私の胸に頭を乗せた良裕さんは、そのまま本当に眠ってしまった。
……プロポーズに感動した私の気持ちと時間を返せ!!!
そんなことを思うも私も眠くて仕方なく、良裕さんにつられるように眠ってしまった。
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