氷山の討伐

第30話

「これを受けたいんですが」

「えっと、この依頼は特Sレベルの依頼ですが、お間違いないでしょうか?」

「はい。これを見せればいいかな?」


 俺たちは冒険所からもらったカードを見せた。

 受付の人はカードを手に取ると、驚きの表情を見せた。


「あなたたちがクラーの町で出たSレベル冒険者ですか……!」

「そ、そうですよ」

「噂は聞いています!あぁ、こんなすごい方と実際にお会いできるなんて……。感無量です!!」


 受付の人は俺の手をつかむとぎゅっと自分のほうへと持っていった。

 ちょっ、それ以上持ってくと当たるから!


「ふんっ!」

「あぁ……!!」


 メルは俺の腕をつかみ、受付の人の元から引っこ抜いた。

 その力、普通の人相手だと腕が無くなっているぞ。


「そ・れ・で!これは受けれるのかなー?」

「は、はい。受けれますが、気を付けてください。依頼の場所はここガルガン王国より北にある山脈、ブリザードです」

「聞いただけで寒そうだわ」

「寒いどころではありません。気温は-100℃を下回り、暴風雪は勢いがありすぎて生身を貫きます」


 それはもう暴風雪じゃないよ。

 弾丸の嵐じゃないか。


「まあそれはいいや。ここから遠いの?」

「それはいいって……。遠いかというと、さほど遠くはありません」

「おかしくないか?ここは寒くはないし、どちらかと言えば大暑と大寒の差は少なそうだけど」

「全くその通りです。この依頼は異常現象の元凶の討伐。その異常現象をもたらしたのがアイスマウンテンロックなのです」


 へぇ!聞けば聞くほど面白そうな相手だな。

 早くどんなやつなのか見てみたい。


「よし!さっそく行こうか!」

「えっと、話を聞いていたんでしょうか?大変危険ですよ?」

「聞いていたよ。聞いていたから面白そうだなあって思ったんだ」

「そ、そうですか……?それはいいとして、報酬につきましては依頼完了次第お渡ししますので、終わりましたらまた戻ってきてください」

「わかった」


 これで初めての依頼を受けられた。

 報酬についてだが、依頼書のところにお金の金額が書かれていた。

 報酬は金貨千枚。

 村で悪魔を倒したときの100倍だ。

 それほどアイスマウンテンロックこいつが厄介みたいだ。


「そういえば国王から報酬貰うの忘れていた!」

「心配ないよ!ほら、鍵を貰っておいたから」


 メルはカギを取り出した。

 いつの間に貰っていたんだか。


「家のほうは依頼が終わってから見ようか」

「私は構わないわ」

「僕も構わないよ」


「ほかに用ってないよね?」

「たぶんないわ。必要なものは元々持っているし」

「じゃあ北の山脈、ブリザードを目指していこうか」


 今回だが、飛ばずに歩いていくことにした。

 気分転換を兼ねての依頼だからね。


 俺たちはガルガン王国を出て北へ。

 少し森が続く先には不釣り合いな氷の山があった。


「急に変わるねー」

「急どころではないわ。誰かが持ってきたのではないか?って思うぐらいだわ」


 まるで地面を削り、そこに別の土地を植えたような変わりようだ。

 俺は試しに入ってみた。


「なるほど。ここからはそのアイスマウンテンロックというやつの領域テリトリーなのか」


 中に入った途端、体に違和感が起きた。

 試しに入れた片足が凍っているんじゃないのか?と思うほどの寒さになった。


「やっぱりな。何かの魔法でここ一体全てを自分の領域にしているみたいだ」

「ここ一体を!?」

「そう考えると恐ろしく広いわよ」


 ゲームでも似たようなものはあった。

 例えば中に入ると霧が濃くなって見づらくなったり、重力が大きくなって動きづらくなったりステージによってのギミックがあった。

 今のように暴風雪で寒くなる場所はあったが、実際の寒さはなかった。

 あくまでもゲーム、エフェクトでしかない。


防寒対策アンチ・コールド


 ゲームでは実際の寒さはなかったが、寒い状態だとバッドステータスがあった。

 この魔法はバッドステータスその対策をすることができる。


「しっかり効果はあるんだな。全然寒くない」


 俺が試しに使い、大丈夫だと分かったら二人とも同じ魔法を使った。

 暴風雪で打ち付けられるが、この程度なら俺たちは全然大丈夫だ。


「さて、アイスマウンテンロックとやらを探すか」


 俺たちは奥へと進み始めた。

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