第29話

「じゃあ戻ろうか」

「ああ。デルガン、我々も行こう」

「国王様、肩をお貸ししますよ」

「すまない、ありがとう」


 すっかり丸くなった国王はデルガンさんの肩を借りた。

 男の友情っていいけど、おっさん同士だと少し微妙。


 最前線で戦って負傷した者は全員無事に助かった。

 シャゼルさんはもう元気で国王が通るための道をつくっている。


 俺たちは国内にまで戻り、国王や最前線にでた人達を見た国民は安心した顔をしていた。

 城に着くと、国王は早急に全隊長を集めるよう命令を下した。


「ディラ、無事だったのね」

「ファラ。そっちの方はどうだった?」

「全員無事よ。ただ気絶させられていただけだったわ」

「それは良かった。それと、ごめん……」

「構わないわ。ディラは私たちのリーダーなんだから。リーダーが決めたことに従うだけだわ」


 ファラは慰めるために、俺の肩にポンッと手を置いた。


「ディラさん、皆が集まりました」


 デルガンさんが俺に報告しにやって来た。


「そうか、でも俺たちはそろそろ行くよ」

「えっ、会議に出ないんですか?」

「ああ、後は国王とみんながいれば大丈夫だろう?」


 俺も会議に出て意見を言いたい。

 だけど、もし俺の意見が通ると、このまま助言し続けないといけなくなる。


「国王に『ディラ達は旅に出た』と言えば納得するよ」

「本当でしょうか?」

「ああ、今の国王ならしっかり分かるだろうからな」

「は、はあ……」


「それでどちらに行かれるのですか?」

「冒険者らしく何かの依頼を受けようかなって」


 冒険者になってからまだ一度も依頼を受けていない。

 ヴェルのこともあるが、少し別のことをしたい。


「そうですか。隊長の私はすぐ行かないといけないので、お見送りができませんが」

「いいよそんなの。じゃあ後は頑張れよ」

「はい!二度とこんなことを繰り返さないよう、国王様と一緒に進んでいきます。本当にありがとうございました!!」

「ああ、じゃあな!」


 こうして俺たちはガルガン王国の城を後にした。


 俺たちが向かった先はガルガン王国内にある冒険所。

 何かいい依頼がないか掲示板を見たが、Sレベルの依頼が少ない。

 その中で唯一あった特Sレベルの依頼を俺は手に取った。


「これなんてどうだ?氷結の大ゴーレム―アイスマウンテンロックの討伐」

「いいわね。面白そうだわ」

「僕もさんせー!初めて聞く敵だし楽しみ!」

「じゃあこれを受けようか!」


――――――――――――――――――――――――――――――――


「ガルガン王国とメルメシア王国は条約を結んだみたい」

「そうですか。さすがディラさんです」

「いいえ、国王同士でやったみたい」

「ディラさんなしに……。ガルガン国王ですか」


 場所は雲の上。

 雲の上にはヴェルとエマ、それとシンがいた。

 エマは溶けたことが原因で、まだしゃべることができない。


「それで次はどこを呼ぶの?」

「そうですね。次は地獄を呼ぼうと思っています」

「分かった。生贄はどうするの?」

「今探しています。次はどこがいいですかね」


 ヴェルは雲が晴れてきた目の前を見た。

 その先に大きな国が見える。


「ここがいいかもしれませんね」

「わかった。早速行こう」

「ええ。少し物寂しいですが、精一杯楽しみましょう……!」

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