第6話

「ディラはどうなの?」

「ちょっと試してみるか」


 今までレベル1で相手をしていた。

 二人を見る限り、もしかしたら俺もステータスがカンスト時のままかもしれない。

 しっかり調整できるか?


「この木でいいか。破っ!」


 俺は木をグーで殴った。

 バキボキバギという音とともに木は粉々になった。

 折れたりではなく、粉々に。


「そこまでりきまなくても……」

「木がかわいそうだよ……」

「いや、いつもLv.1だったから調整できなかったみたい」


 これでわかった。

 レベルは1でもステータスがカンスト時のまま。

 なんていう調整ミスだよ!!


「どうやら俺たち、最強のままこっちにきたみたい」

「えー!でもLv.1だよ?」

「だから、もしだよ?もしかしたらレベルが上がる可能性があるなら……」

「これ以上強くなれるってことね」


 ただでさえここまで強いのに。

 これ以上強くなれるチャンスがあるなんてやばいだろ!


「そろそろ戻ろうか。少し暗くなってきたし」


 こっちに来た時は夕方近くだったみたいで空が薄暗くなってきた。

 夜に戻ると言ったから戻らないと。

 俺たちは村長の家へと向かった。


「でもまさかこの姿で魔法を使えるなんて」

「僕は結構うれしいかなー!」

「まったくのんきな人たちだ……」


 いきなり知らないところに連れてこられたんだぞ?

 俺は不安しかないよ。


「んー、えいっ!」

「ど、どうしたの?いきなりこんなこと」

「嬉しくないの?僕けっこうこのアバター気に入っているんだよ?頑張って調整したんだから」

「ちょっ、メル!抜け駆けはずるいわよ!えいっ!」

「ファラもどうしたの!?」


 二人とも俺の腕に抱きついた。

 何!?モテ期!?

 モテ期は都市伝説だったのは嘘だったのか?


「その、冒険者方。これから悪魔が来るのにそんなので大丈夫なのか?」

「ご、ごめんなさい。だけど悪魔に関しては大丈夫ですよ」

「本当なんでしょうか……。そういえばレベルも見せてもらっていませんし」

「あー、それなんだけど、どうやら神のいたずらみたいでLv.1のままなんだ」

「なんですと!?それだと死にに行くようなものでは――」

「でも大丈夫。安心して」


 さっき俺たちは試してきてわかったんだ。

 今は負ける気がしない。


「村長!悪魔が来ました!」

「なんだと!?いつもより早いではないか!」

「それに、一体ではなく三体います!」


 お、ちょうどいい頭数。

 俺とファラ、それにメル一体ずつ。

 都合がいいな。


「よし!それじゃあ行くか!」

「がんばるぞー!」

「楽しみね」


 俺たちが今から遊びに行くようなことを言うと村長は口をポカーンと開けていた。


「く、くれぐれも気をつけてくれ。お主たちが負ければわしらは終わりなのだから」

「わかってるって」

「お茶でも飲んでて待っててください」

「すぐもどってくるよー」


 俺たちは外へ出た。

 空には三体の悪魔がいる。

 村長は気になったのか、悪魔にばれないように俺たちを見ている。


「貴様らは誰だ?」

「俺たちはただの村の助っ人だ。それよりなぜこの村を襲う?」

「所詮ただの人間。俺たち悪魔にとってはおもちゃにすぎない」

「おもちゃだと?」


 少し、癪に障る。

 俺もその人間なんだ。

 馬鹿にされているようでむかつく。


「ああ!恐怖の表情をしながら殺すのが楽しいんだ。おもちゃだから遊ばないともったいないだろう?」

「気に食わねぇ……。ファラ、メル。あいつら俺がもらっていいか?」

「私も気に食わないけど、ここは譲るわ」

「僕もかまわないよ!でもコテンパンにしてね」


 これで俺がこいつらの相手をできる。

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