1984年のなんちゃらかんちゃら
吉行イナ
5.5の記憶
全くややしい話もあるものだなと思った。
いや 話がややこしいのではなく わたし自身の記憶能力の問題だ。記憶の信頼性をこれほどまでに疑ったことはこの世に生を受けてこの方、全くではないにしろ無かったわけではないが今回の件に関しては、ほとほと申しわけなく思う次第である。
というのも1年ほど前に友人から8231を勧められて好きになったのだが
実は8231の展覧会が7年前に行われていたという情報が脳の中央部分に堂々と居座っていたので友人に伝えたのだ。
僕は確かにその展覧会が行われたという内容のニュース番組を見た記憶があるし
当時、8231に関して全くと言っていいほど興味もなかったのだが
8231は世界的にも有名だしそのニュースに関心を示した覚えがあったからだ。
しかし友人はその事実に衝撃を受けながらもありえないと話した。
8231は確かに展覧会を開いてもいいくらいの代物だけれども
あれを展覧会の場にまで引っ張り出すのはまず至難の業だし、それが実現できたところで
8231会の会員たちが黙ってはいないだろうから実現は不可能だということだ。
僕はまさかと思いながら8231の展覧会の情報をインターネットで調べた。
たしかに8231の展覧会の情報はまったくもってなかった。
僕はよくよく考えた。昨日の夕飯に食べた麻婆豆腐を疑い、3年前に別れた彼女と本当に別れたのかを疑い、5歳の時 家族で近くの公園に行った思い出をも疑った。
そうだ。展覧会を開いたのは8231ではなく2840だったのだ。
脳全体に記憶修正回路をめぐる微弱な電子信号が流れた。
その瞬間、僕の心臓がぴたりと動くのをやめた。
世間に潜む8231会の雇われ殺し屋はそんな記憶違いをも察知しては、その存在を許してはおかないのだ。
1984年のなんちゃらかんちゃら 吉行イナ @koji7129
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます