第13話 人工知能省Phase2
重苦しい空気の中、会議は始まった。まず口を開いたのは本剛だった。
「河本さん。今回のお話ですが、かなり大胆な事を提案してきましたね。お陰で私の会社内は大騒ぎですよ。アンドロイドを仕事以外の生活領域まで踏み込むとは──これは幾らかリスクが大きすぎはしませんかね」
三鷹も後に続いて口を開いた。
「私の会社も同じような状況ですよ。アンドロイドを一般家庭に置いて一緒に住むという事は即ち、アンドロイドを家族同然に扱えという事ですよね。今の時代人間の仕事をアンドロイドが代理業務している訳ですが、それによって生じた反発派のマイナスなイメージは払拭しきれていません。この状況下でアンドロイドの使用レベルを日常生活まで落としたら、動乱が起きますよ」
どうやら、他の二社も俺の会社と同じような状況のようだ。河本が打ち出したこの計画は日常生活でのアンドロイドとの共存を目指すという、尖ったプランだ。この世界でのアンドロイドの立ち位置はあくまでも人間を仕事を助ける
「江口社長の所は社内はどの様な感じで?」
河本が俺へ鋭い視線を向けてきた。
「殆ど他の二社と変わりません。意見が二分して、会議もろくに進まない状況ですよ」
「そうか」
河本は掠れた声で笑った。かつて民間企業での現場経験のある河本は恐らく、今の状況は予測出来ていたのだろう。
「まぁ確かに、三社共混乱するとは思っていたが。私も出来る事なら大きくアンドロイド業界を揺るがす様な今回の政策はしたくはない。だが、せざるを得ないんだよ」
「どういう事ですか」
本剛が食らいつく。
「君たちも知っている通り、この社会で人工知能は大きな影響力を持っているだろう。君たちが製造しているアンドロイドもAIをフルに活用している。だが、そのAIが人間の頭脳を超えた──所謂『特異点』に達してから三十年近くなる」
会議室が沈黙に包まれる。確かにAIが人間の知能を超えてかなりの時間が経っている。だが、それと今回の政策がどう関連しているのか。俺はまだ分からなかった。頭のいいアンドロイドを家庭にも使ってもっと社会の利便性をあげるつもりか。
「それと今回の政策がどう関わりを持っていると」
「江口社長。今の社会でのアンドロイドの使用目的は知っていますよね」
「えぇ。人間の仕事の補助及び、代理業務ですよね。会社での使用に制限されています」
「それはアンドロイドが一般流通して変わらないルールだった。君たち三社がそれぞれ持っているAIはこの何十年間休むことなく学習を続けた。今稼働しているAIは仕事業務に関しては素晴らしい知能を身につけている。──ここまで来て、何かもう勘付かないか」
暫くして三鷹がハッとした表情をした。河本は不気味な笑みを浮かべて頷く。
「まさか……恐れていた事が起きたのか」
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