0-4『技術』




【動像(ゴーレム)】……。



それは『土』と『錬金』により造られた非生命体。




これらを最初に作った者は『緑の大陸』の地下に棲まう種族『土小人(ドワーフ)』だ。




彼等は男も女も一律にけむくじゃらの大食漢で

そこの大陸でなければ生きていく事は出来ない。

性格は荒々しいが悪くはなく旅人をもてなす事が彼等の信条だ。


だが、その技術を知った人間の国家がある日森の大陸全てに点在するドワーフの穴蔵に攻め込み捕囚し『五大陸』全土に散らした事で動像(ゴーレム)の技術は齎された。



……今では森の大陸に彼等の目撃情報はなくなり、

動像(ゴーレム)は人の金持ちの『骨頂品』兼『警備員』として置かれている現状だ。


ここ奴隷都市では特に顕著でもっぱら奴隷達の枷として機能させている。


(ドゴォン!!)




このように首輪に鎖を繋がず逃げようとする者は主人の命令通り殺そうと動く。


「流石硬い石の塊。

マトモに受けるとひとたまりもないだろう」


なまじ魔法で製られた物体は『魔素(マナ)』で強化されており同じ素材であっても耐久力の面に於いて格差が現れる。



(フシュー……)



このように同じ凝固土(コンクリート)でも人型動像(ゴーレム)が壁(ウォール)に勝る事もある。

壁全体には大きな罅が付けられている。


(グオオオオオ!!)

無機質の雄叫びをあげ背後にいるリュションに裏拳を放つ動像(ゴーレム)。

リュションはそれを避けた為標的を喪った拳は別の牢屋の鉄格子をひしゃげ折った。


「きゃあ!!」


少女の声がした。

発信源からして壊れた牢屋だろうか。

「まずい!」


ここの動像(ゴーレム)は万が一鉄格子を壊された際に中にいるであろう『奴隷』の始末をプログラムされている。

実際施錠によって脱出を試みた者もいたらしく、

それを成した者は連帯責任として同僚諸共肉片となっていた。

そして以前自分の失敗により犠牲になった者達も居る。

:そうやって:鍛えられ現在のチャンピオンなる地位についている。


(コロコロコロコロコロ????)

独特な音を発し首を動かしながら牢屋に入っていった動像(ゴーレム)の後を追うリュション。

「っ」

牢屋には銀の長髪を三つ編みした少女が恐怖に染まった顔を浮かべ壁に張り付いていた。


(キュイイイイン!!)

左右の腕を真っ直ぐに伸ばし駒のような体勢に変形する。

それを見たリュションは先程懐に仕舞った丸い板を取り出し黒い魔法で杖の形にし通路中に響き渡る音量で声を張り上げた。


「伏せろォ!!」

そして:それ:の穂先を動像(ゴーレム)の首元の関節に狙いを定め底に掌を置いた。

それは独りでに『壺』を4つ備え穴から煙を噴き出し……

「ハァ!!」

瞬間掌から紫電が走り杖は矢の如く動像(ゴーレム)の首を穿った。


(ギギギィ)

ゴーレムは動きを鈍らせた。

それを確認し刺さった杖に手を翳すと、

突如黒い魔法陣が動像(ゴーレム)の足元に現れ内部から複数の『木の枝』が生やされ至る所を串刺しにした。

罅が広がり動像(ゴーレム)の視界が劣化していく。

(ブ……ブブブ……)

首を曲げ顔をリュションの方に向けた動像(ゴーレム)は、

低い嘶きをあげ瞳を『閉じ』た。

それを終えた動像(ゴーレム)は耐えきれなくなったのか身体が砕け散り一石一石の瓦礫となった。

残るは瓦礫の山に紛れた歪な杖とその穂先に刺さった『紅い宝玉』だった。

『グパァ』

それを杖が口に変形して呑み込んだ。

「っ」

その光景を見届けた銀の長髪の少女は混濁した意識を手放した。

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