灰咲勇兎

酒で薬を飲む人の陰で

晩夏がひとり泣いている


パーカーを取りに引き返す

秋風は心の隙間を彷徨う


みんなが嫌いな冬を

自分だけは愛してあげたいと思う


テストが悪いと怒られる子どもは

自分を抱きしめて倒れることを覚える


隠れんぼが得意になると

そのぶん外が浮き彫りになる


LEDの光はあまりにも直線的で

知らないうちに黒が叫び出す


あのとき貰った新興宗教の冊子は

今頃埋立地の神様になっているのだろう


本当は知っているくせに

本当は気づいているくせに


涙を流す季節と共に泣きたいくせに

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灰咲勇兎 @haisaki_isato

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