第27話
席に座り注文を済ませ、俺と由香里は先ほどの映画の話しを始める。
「面白かったね!」
「あぁ、久しぶりに映画を見たが、良いもんだな」
バイトだなんだと忙しく、俺はあまり映画を見る機会が無かったが、やはり大きな画面で映像作品を見るのは迫力があって面白い。
いつもテレビで見る映画とは雰囲気が違う。
「由香里は良く映画とかを見に行くのか?」
「うん、友達とかとたまに行くかな……拓雄君はやっぱり岡部君とかと行ったりするの?」
「いや、俺はあんまり。どっちかというと借りてきて見る方だな」
「そうなんだ……ち、ちなみにどんな映画が好きなの?」
どんな映画か……。
アクションにファンタジー、サスペンスなど俺はジャンルにとらわれず、色々なジャンルの作品を見る。
これと言って好きなジャンルは無い、どんな映画かと言われると難しい。
「そうだな……俺は適当に選んで見るからどんな映画が好きかと言われると難しいな・・・・・・」
「そ、そうなんだ、私は恋愛映画とか好きで良く見るんだ」
「今日もラブコメディーの映画だったしな。やっぱり女子はそう言うのが好きなんだな」
他愛も無い話しをしながら、料理を待っていると、店員さんが料理を運んできた。
俺たちは運ばれた料理を食べ始める。
俺はハンバーグ定食を注文し、由香里はトマトスパゲッティーを注文した。
数十分ほどで食事を済ませ、俺達は店を後にする。
「どこか行きたいとこあるか?」
「え!? い、良いの?」
「いや、良いも何も折角町に来た訳だし、買い物か何かして行きたくないか?」
「う、うん! 行きたい!」
「じゃあ、行くか」
俺と由香里は食事を済ませて、買い物に向かった。
洋服を見たいという由香里の要望を聞き、俺はまずアパレルショップに向かった。
洋服を見ながら、由香里は俺に似合うかどうかの意見を求めてくる。
「どうかな?」
「良いんじゃないか、由香里はスタイルが良いから、何でも似合いそうだ」
「そ、そうかな?」
顔を赤らめる彼女にそう言うと、彼女は更に顔を赤くして答える。
由香里は可愛いし、スタイルも良いので基本的に何でも似合いそうな気がする。
「じゃ、じゃあこれ買っちゃおうかな?」
「良いんじゃないか」
「う、うん! じゃあ買ってくるね!」
由香里はそう言って、レジの方に向かって行った。
俺はそんな由香里を見て思う。
考えて見れば、彼女は俺の事が好きなんだったと……。
こんな無愛想で面白みの無い俺のどこがそんなに良いのだろうか?
レジを済ませた由香里と店を出て、俺は歩きながら由香里に尋ねる。
「なぁ、由香里」
「ん? どうかした?」
「なんで由香里は俺の事が好きなんだ?」
「ふぇ!? い、いきなりどうしたの!?」
「いや、なんていうか……俺って見ての通り、あんまり表情変えないし、無愛想っていうか……」
「そ、そんな事ないよ!」
「いや、別に気を遣わなくても大丈夫だって。俺が一番そのことを理解しているから」
まぁ、いままで散々言われてきた事だから、今更なんとも思わない。
「わ、私は……その、なんていうか……拓雄君の優しいところが好きかな?」
「優しい? 俺がか?」
「うん………多分覚えて無いかもしれないけど、拓雄君って一年生の頃に私を助けてくれてるんだよ」
「ん? そうなのか? いつだ?」
「一年生の……夏頃だったんだけど……私熱中症で倒れちゃってさ……」
一年の夏?
熱中症?
ヤバイ、全くわからないぞ……。
「拓雄君が保健室まで運んでくれて、しかもずっと側にいてくれて……嬉しかった」
そんな事あったか?
俺はなんとか思い出そうとするが、一向に思い出せない。
だが、確かに夏に誰かを保健室につれて行ったのは覚えている。
「そうか………」
「うん、拓雄君からお姫様抱っこされたの、今でも覚えてるよ」
あ、思い出した。
その後、ミスター王子様とかいう訳のわからないあだ名を和毅から付けられたのだ。
「あぁ、思い出した。確かあのときは眼鏡を掛けてたよな?」
「うん、あの後からコンタクトにしたから、気がつかなかったのかもね」
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