第25話

「いや、俺は良くないんだが……」


 俺のベッドでゴロゴロし始める早癒。

 こいつは暇なのだろうか?

 

「俺も横になりたいんだが?」


「ん……どうぞ」


「いや、待て」


「何?」


「隣を空けろって意味じゃない」


「じゃあ、何?」


「横になるから、部屋から出て行ってくれって話しだ」


「一緒に寝れば良い……」


「それは第三者から見られたら非常にヤバイから嫌だ」


「むぅ……わがまま」


「どっちがだよ……」


 一向にベッドからどかない早癒。

 いつものメイド服では無く、ラフな部屋着なのがまた厄介で露出が多い。

 

「暇なのか?」


「うん……やること無い」


「趣味とかは?」


「ソシャゲ」


「友達と遊びに行ったりは?」


「……友達居ない……」


「なんかすまん」


 俺の周りってもしかしてボッチが多いのか?

 そんな事を考えていると、早癒が突然起き上がり俺の袖を引っ張ってきた。


「なんだ?」


「勉強・・・・・・疲れた?」


「あぁ、まぁ……それがどうした?」


「じゃあ……息抜きしよ」


「息抜きって……何をするんだ?」


「………ゲーム?」


「考えて無かったんだな……」


「………」


 何もすることが無いので、早癒はとりあえず俺の部屋に来た様子だった。

 時間はまだ16時を過ぎた辺り、夕食にもまだ早いしかといって出かけるのも考える時間だ。

「スマホのアプリでオセロでもするか?」


「うん……」


 とりあえず、俺もやることがないので早癒とオセロゲームで遊ぶ事になった。

 スマホでアプリをダウンロードし、二人でベッドの上に座ってゲームを開始する。


「早癒はゲームが好きなのか?」


「ん……結構やる」


「そうか、どんなのやるんだ?」


「FPSとかRPGとか……あとソシャゲ」


「ゲーマーなのか?」


「……そうかも」


 話しながらやっているオセロだが、早癒はかなり強い。

 既に二つの角を取られてしまった。

 なんとか反撃をしようと、俺は残った二つの角を取るために奮闘する。


「あ、まじか……」


「私の勝ち……」


 負けてしまった、しかも結構な大差で・・・・・・。


「拓雄……弱い」


「もう一戦」


「ん・・・・・・良いけど、次負けたら罰ゲーム」


「罰ゲーム?」


「ん、じゃないと楽しくない」


「まぁ、確かに・・・・・・一理あるな」


「じゃあ、次勝った方が・・・・・・負けた方の言うことを何でも聞く」


「あぁ、いいぞ」


 このとき、俺は軽い気持ちで良いぞと言ってしまった。

 しかし、この事を後に俺は後悔することになるとは、このときの俺はまだ何も知らない。 そして始まった第二戦。


「あ、角取られた」


「拓雄・・・・・・弱い」


「うるせぇよ」


 文句を言いながら、俺はマスを埋めて行く。

 しかし、早癒の方が一枚上手のようで、俺はどんどん追い詰められて行く。

 そして・・・・・・。


「負けた」


「勝った・・・・・・」


 結果はまたしても早癒の大勝。

 俺はため息を吐き、画面から目を離す。


「早癒、強いな……」


「拓雄が弱いだけ………」


「うっせぇっての」


「約束……」


「あぁ、なんでも言うことを聞くってやつな。いいぜ、なんだ?」


 あまり無理な事は言わないだろう。

 俺はそう思っていたのだが………。


「一緒に寝る」


 は?

 今、早癒さんはなんて言った?


「悪い、もう一回頼む」


「一緒に寝る」


 よし、俺の聞き間違いでは無いらしい。

 と言うことは、早癒の言い間違いだな。

 全く、早癒はしょうがないな……俺が教えてやろう。


「何を言ってるんだ? 一緒に寝るって聞こえたぞ」


「うん……だから」


「だから?」


「今夜は一緒に寝よ………」


「絶対に嫌だ」


 どうやら早癒の言い間違いでも無かったらしい。

 確かに俺はなんでもとは言ったが、早癒も常識くらいはわきまえてくれると思ったのだが……。


「ダメだ」


「何でも聞くって言ったのに………」


「まて、普通に考えろ、年頃の男女が同じ布団で寝るのは不自然だ」


「そういう人もいる」


「最上さんとか、他のメイドに見つかったら大変だろ?」


「問題ない………下の世話だって言えば、仕事の一部になる」


「だから、それはメイドの仕事では無い」


 そう思われるのが一番嫌なのだが・・・・・・。

 前々から思っているが、早癒は少しメイドの仕事を勘違いしている気がする。


「それ以外な」


「むぅ・・・・・・勝ったのは・・・・・・私」


「いや、普通にダメだろ・・・・・・」


「じゃあ・・・・・・一緒におふ・・・・・・」


「それもダメだ!」


 とんでもない事を言おうとする早癒だった。







 夕飯前、俺は明日の詳細を伝えるために由香里に電話掛けていた。


「もしもし?」


『も、もしもし!』


「あ、由香里か?」


『う、うん! あ、明日のこと?』


「あぁ、明日なんだが・・・・・・」


 俺は由香里に明日の待ち合わせ場所と、時間を伝える。


「・・・・・・てな感じで大丈夫か?」


『う、うん! 大丈夫だよ。明日はよろしくね』


「おう、じゃあ明日な」


『う、うん・・・明日・・・・・・』


 そう言って俺は電話を切った。


「明日、何着てくかな・・・・・・」





 私は拓雄君からの電話を切り、直ぐさま服選びを始める。


「どうしよ~! 明日着ていく服が決まんないよぉ~!!」


 選び初めて既に二時間ほどが経過している。

 好きな人とのデート、気合いを入れのは当然なのだが、準備に時間が掛かってしまう。


「う~、拓雄君ってどんな服が好きなのかなぁ・・・・・・」


 落ち着いた感じ?

 それとも、少し大胆な感じ?

 あぁ~ん、全然わからないよぉぉぉ!


「うぅ・・・・・・こうなったら葵に電話を・・・・・・」


 葵は拓雄君と仲の良い唯一の女の子だ。

 拓雄君の友達の岡部君の彼女でいつも三人で居る。

 彼女に聞けば、何かわかるかもしれない!

 私は自分のスマホを手に取り、直ぐさま電話を掛ける。

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