オセロ
亥BAR
第一章 感じたそれは美しかった
第1話 感じたそれは美しかった
「ひいぃぃ、た、助けてぇ!!」
街の人々が魔王軍の繰り出した魔物に追い詰められる。離れた先にいる魔王軍の指揮官を通して魔物が放つ底知れない闇が人々の心の奥にある小さな光を押しつぶそうとする。だが、それは許されない。
一筋の閃光が一体の魔物を切り裂く。忽ち魔物は真二つに引き裂かれ虚空へと散っていく。さらに続く光の一撃は周りに居た魔物を次々と消滅させていった。その後、ゆうゆうと地面に立っているのは勇者である白髪の少年。
助かったことを知る街の人々は少年に軽い礼を告げると一目散に避難場所へと逃げていった。その中、少年はさらに続く魔王軍の群れに突入していく。
眩しい光が魔王軍を瞬く間に包み込み、押し返していく。
現場から少し離れた先にいる魔王軍の指揮官である少女は魔王軍が押されていることを知る。
遠くからでもわかるほど、闇の中でその闇を押し返そうと強く光るその力。少年が放つ力。だが少女もまた、対抗するように闇の力を解き放つ。
少年と少女、互いに顔を合わせたわけではない。直接、ふたりが放つ光と闇が衝突したわけではない。だが、ふたりは敵対するもの同士。どちらも譲るわけにはいかないゆえ、力を全力で解き放つ。
そのとき、少年は離れた先にある闇の力を感じた。勇者軍が放つ光を一瞬にして押し返していく闇。神々しくも深く黒々と揺れる闇の力。
そのとき、少女は離れた先にある光の力を感じた。あたりに蔓延した闇の中でも見事に輝き全てを照らしていくその光。眩しく輝く白々と溢れる光の力。
互いに距離はあった。数百メートルの間で、互の剣が交えることはない。だが、確かに少年と少女は互いが放つ力に惹かれあっていた。先に見える自身と相反する力。自身とは種類がまるで違う力。本来、決して惹かれるべきでない力。
戦闘が続く中、少年と少女は手を相手の方に向かって伸ばしてみる。だが、決してその手が届くことはない。でも、伸ばし続けた。それが、あまりに興味を惹かれた存在だったから。何が何でも欲しい。そう思ってしまったから。
少年と少女は荒れ狂う戦場の中、同時につぶやいていた。
「「なんて……美しい……光/闇なんだ……」」
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