龍を料理し、それを喰う

@samex

第一話

その昔、腕の立つ料理人がいた。

幼いころから才を磨き、いずれ歴史に名を残すだろうとまで言われていた。


その者が、いつの時からか龍を料理することに興味を持ったという。

しかし、周りにいくら聞いても龍なる生き物を見たものがいない。

料理人は旅に出た。


旅に出て数日、料理するためには専用の道具が必要だと知る。

料理人は大金を払いその器具を用意させた。

体に合わせて一から作るため、時間がかかるらしい。

料理人は旅に出た。


旅に出て数日、龍を料理するには自ら龍を殺す必要があることを知る。

料理人は長い年月と大金をかけて龍を殺す技と、剣を得た。

また、料理人は旅に出た。


旅に出て数日、龍に出会うためには一人で海に出る必要があることを知る。

料理人は数年かけて一人で航海する技術を身に着けた。

龍の肉を得て料理する術を身に着けた料理人はもう旅に出る必要はなかった。


龍に出会うためには金が要る。

船やら路銀やらを用意するため、料理人は料理人に戻った。


それから十年かかった。

龍に出会うための船の技術

龍を殺す技と剣

龍を料理するための道具

時の流れはそれらをさらに磨き、料理人に絶対の自信をつけさせた。


そして、ある日の早朝。

「さらばだ。私は龍を料理し、それを喰ってこよう」

そう言って料理人の乗った船は海へと出て行った。


その後、料理人の姿を見たものはいない。

料理人が龍を殺し、喰うことができたのかも、

龍と呼ばれる生き物が本当にいたのかも誰もわからない。



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