バレンタイン・デイ2
「これ~。バレンタインチョコ~。食べてね~。」
「お、ありがとな!」
「全自動チョコ製造マシーンから出来たこれを食べてみてくれ、助手よ。」
「ちゃんと、食べれるんでしょうね?」
「君にはいつもお世話になっている。そ…その…バレンタインチョコを作ってみたんだ!食べてみてくれ!」
「先輩!ありがとうございます!」
「私のなんかいらないだろうけど、チョコ……。ゴミ箱に捨ててもいいから。」
「そんなこと無いよ。ありがとう。」
「あたしとお前のロック魂で溶けないように、チョコクッキーだ!!」
「うわぁ!嬉しいよ!」
「お、流石に大量だな。私のも良かったら食べてくれ。」
「会長にいただけるなんて嬉しいです!」
「お前どんだけ貰えば気がすむんだよ!!」
「落ち着け小田!ステイステイ!!」
こんもりとバレンタインチョコの山が出来た、相模の机を見て発狂した小田を抑える。
「待て待て。みんな義理だから!」
「それでも欲しいんだよ!!俺はアサヒから貰った一個だぞ!しかもお前今生徒会長からも貰ってただろ!!」
「やめろ!今あいつをお前が殴ると只の哀れな奴になるぞ!抑えるんだ!!」
「あら、チョコが欲しいんですの?」
暴れる小田に花園が近寄ってくる。
「わたくしの義理チョコ自信作皆様に頂戴致しますわ」
そういうと、豪華絢爛な袋を俺ら男四人に手渡してきた。
「うわぁ!花園さん!ありがとう!!」
「中は……これ手作りか?」
相模の問いかけに花園はデカイ胸を張った。
「そうですわ!リカさんに教わってセリカ様と作りましたわ!」
「えへへ~。」
多少ナーバス気味のリカちゃんが手を降る。
相当苦労したんだなぁ……。
「じゃあ、私からもみんなに……。兄ちゃんは家帰ってから渡すね。」
「了解。」
相模を除いた三人が、リカちゃんからチョコを受けとる。
「ふおおおお!?一気に二つ増えた!?」
小田が興奮しまくってる。
「二人ともありがとうな。」
俺が改めて二人にお礼を言う。
「ううん。ホワイトデー期待してるね。」
リカちゃんのそんな普通の返答が何となく面白かった。
「これは、期待に応えなきゃな。」
「ふふ」
「わ、私からもこれ!」
いつの間にか近くに来てたセリカも俺らにチョコが入った袋を一袋ずつ……正確には小田を除いた三人に手渡した。
「勘違いしないでよね!!義理チョコ何だからね!!」
「疑いようねえよ。」
「あれ!?俺のは!?」
小田の悲痛な問いかけにセリカはもじもじとする。
「………し、知らない!!」
そういうとセリカは何処かへ走り去ってしまった。
あ~あ、という感じで苦笑いするリカと花園とアサヒ。
「ちくしょー!!!仲良くなったと思ったんだがなぁ~!!」
小田はそんなことにも気づかずその場で崩れ去る。
「あれ、絶対セリカ本命を小田に用意してるよな。」
「あれ?糞鈍感大相模のお前でも気づいた?」
「え、何その妙なテンポの悪口。」
放課後
「じゃあな~。」
「おう。」
相模、アサヒ、リカと別れ、俺は机に突っ伏し落ち込む小田の横に座っている。
別に心配してる訳じゃなく、どうせあいつが来るだろうからそれを盗み聞きして青春脳に栄養を与えてあげようとしてただけだからね!!
そんな誰かさんの真似をしていると、その誰かさんがドアの裏に立っているのに気付いた。
「ごめん、俺トイレ。」
そう言い残し教室を出ると、そこにセリカが立っていた。
「しばらく教室に戻らねえよ。」
「ありがとう。」
そんな短い会話のあと入れ代わりのように教室に入ったセリカに気付かれないよう、ドアの後ろに隠れた。
「小田?」
「あれ?セリカちゃん?」
「あのね………。こ、これ!!」
「何?この袋?」
「こないだラインでカップケーキが好きって言ってたでしょ?だからこれ。」
「?」
「だ、だから!他の奴と違ってバレンタイン小田だけチョコカップケーキ作ったの!!本当は一番にあんたに渡したかったけどアサヒに貰ってるからこんな時間に………、いらなかったら捨てればいいから!」
「待ってセリカちゃん!……これ凄い美味しいよ!!」
「もう食べてんの!?……フフフ……お、美味しかった?」
「うん!凄い美味しいよ!!セリカちゃん最高だよ!!」
脳がとろけそうな甘々会話はまだ続いているが、これ以上聞いてると普通に盗聴になりそうなので俺は教室を後にし、校内をブラブラしていた。
ある教室の前に差し掛かった所で教室から出てきた女の子とぶつかってしまった。
その衝撃なのか、その子が持っていたプリントが一面に散ってしまった。
「あぁ、ごめん。拾うわ。」
プリントを一枚一枚拾っていくと、そのプリントには何本も線が、よく見るとコード譜だった。
「コード譜か。俺も最近ギターやり始めたんだ。よしこれで全部だな。はい。」
譜面を全て集め、相手に手渡すとき初めて相手の顔を見た。
目の前に立っていた子は、「ディーヴァ」桐谷カナデだった。
「あぁ、カナデちゃんだったか。ごめんね。はい。」
俺が手渡した譜面を、機嫌が悪そうに奪い取って俺を睨んできた。
「下の名前で呼ぶな。」
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