第16話

『ツンツン。ツンツン。』

箱子を先頭にして、吝奈と木憂華が後ろにつきながら、長い枯れ木の枝で、横たわっている昆太をつついている。但し、木憂華の枝は10メートルの長さを誇っている。


「ううっ。何かにつつかれているな。これは木の枝か?こういう場合、たいてい、幼女が周りにいて、モンスターに敗れて倒れているお兄ちゃんを目覚めさせるイベントが発生しているハズだ。」


「あっ、やっと起きたようでちゅわ。これがウワサに聞くアレでちゅの?」


「そうだよ。これこそ、あたしのお兄ちゃんだよ。なんでもお兄ちゃんの前に『ロリ王』がつくらしいけど。」


「ロリ王?リヤ王とかいう名前なら聞いたことあるぢゃん?」

 木憂華はお兄ちゃんという異物から10メートルの距離をキープしている。実のところ、木憂華はビビりであった。


「それは知らないけど、自分でロリ王お兄ちゃんって名乗ってたよ。だからあたしのロリ王お兄ちゃんだよ。」


「俺の前で何を話してるんだ?お前は、さっきのロリ妹!改めて見ると、やっぱり萌ネ、萌ネ、萌ネ~!」

頬を真っ赤に染めてだらしなく緩ませた昆太。


「なに、この生き物。化け物じゃないんでちゅの?」

吝奈の幼女声に著しく反応した昆太。


「さっきの幼女よりもさらに強力なアニメ声の主はどこだ?」

大きな声を出して、立ち上がり睥睨する昆太。


「そこか!こ、これはお嬢様系幼女か?フィギュアでしか見たことがないぞ。まさか、リアル世界にレアモノ幼女が存在するとは。しかもケモノ耳のお得なオプション付きだ!」

思わず立ち上がった昆太。


「「キャーキャー!!」」

吝奈と木憂華が森を切り裂くような悲鳴を上げた。ちんちくりんな体操服に超鋭角ブルマに、可憐な角膜を突き破られたのだからやむを得まい。


「おや、お嬢様系幼女の後ろにもうひとりいるぞ。」

吝奈の10メートル後ろにいた木憂華も、昆太の幼女ソナーの索敵範囲で捕捉されてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る