第1話
『ピーヒョロロ~。』
トンビらしき鳥のたった一羽の鳴き声が鳴り響く。他には何も聞こえない、のどかな野山が広がる光景。
そんな鄙びた村で、小さな黄色い花を見てしゃがみこむかなり小柄な少女。薄茶色のショートカットで、同色調のヒョウ柄ワンピースを着ている。スカート部分はかなり短く、わずかに浅黒く健康的な絶対領域が剥き出しになっている。鳶色のまん丸な瞳とふんわりとして鼻と唇が野性的である。
少女の腰には、茶色の袋に入れられたナタが紐で括り付けられている。揺れ具合が相応の重量感を示している。
「あ~あ。ヒマだなあ。人生活性化のためにお兄ちゃん、ほしいなあ!」
いきなり変なお願いを祈るヒョウ柄少女。
「でも、お兄ちゃんって、男の子らしいんだよね。男の子って、いったいどんな動物なんだろう。お兄ちゃんっていう言葉しか知らないんだよね。男の子って、化け物ってウワサも聞いたことあるし。男の子って、ゾウが進化した形態とかいう話もあるし、よくわかんないや。お兄ちゃんが魔法と関係があるとかいう話を先生がしていたしなあ。あたしには魔法が使えないし、よくわからないけど。」
少女が見つめている花の向こうに、金色と赤色が見える。
「向こうにも花が咲いているのかな。ミニチュアなお兄ちゃんが中に隠れているかもしれないよね。」
立ち上がって奇妙フレーズを連続させながら、向こうの花の方に近寄る少女。
そこには二本の花がたしかに咲いていた。
「こんな色の花、見たことないなあ。きれいだな。よし、ミニチュアお兄ちゃんを探し出すぞ。」
腰を落として左右にある二本の花を見つめている女子。
『ジーッ』『じーっ』
「あれ?なんだか、すごく強い視線を感じるよ。それもあたしの下半身に。」
短いスカートはしゃがみ込んでしまえば、その下に隠されていた布地は哀れにも露出するしかない。
「あわわわ!」
思わずスカートの裾を掴んで伸ばそうとするが、伸縮不自在の素材は強力に抵抗する。結果、露出継続となった女子の可憐な下半身を覆う脆弱な繊維集団。
「こ、こわいよ。それに両方とも花の下から?」
『ビロ~ン』『びろ~ん』
「あれ?地中から何かが伸びたような感じがするよ?」
白くまっすぐ通った筋と小さな団子が、ニョキニョキと生えてきた。
「キャー!ノゾキ~!鼻の下、伸びきってる!キモイよ~!」
『クン、クン』
悲鳴を上げた女子を見て、地中から出てきたひとつの鼻が鳴って言葉のように聞こえた。
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