第2話 寮生活、基本の一日

元来、男子寮の朝は、早い人もいれば、遅い人もいる。

大抵の奴は、こうなるであろう。

「あ~。起きたくない。」と…。


だが、この寮では大概の奴が早い。なぜなら…。


「なぁ、今朝のメテオドロップ(流星落とし、倒れた相手の首根っこを掴んて空中に投げ飛ばし、柔道の肩車の要領で地面に叩き付ける技)、どうだった?」

「まだまだ、目覚めにすっきりしない物が残るな。こう、落とす角度を計算して、庭に1メートルはめり込むように落とさないと、敵には効果的じゃないぞ?」

「あれ以上の威力を出すと、空中で敵に投げの体勢を崩される可能性があるんだよなぁ…。」


「あ、また、一人、窓から飛んだぞ?飛距離は…惜しい、15メートルで着地しやがったな。あの技は…インフィニティダークローズ(永久の黒薔薇、黒い薔薇の花びらが敵を切り裂き、永久の眠りへといざなう中二技)か?」

「いや、あれは、ヴァーンズィンアイアンクロイツツヴァイ(二重鉄十字狂乱、二つの鉄十字が、自身の周りを飛び交い、攻撃を防ぎ、なおかつ、周囲の敵を切り裂く攻防自在の必殺技)だな。昨日は凄かったもんな。窓を破って道路も突き破ってお隣の家に突き立ってたからな。」


そんな周りを巻き込んだ日常も、超常の力で全て元通りになるから、始末が悪い。

朝は早く起きた者から、同部屋で寝ている者に技をかけて良い。強い敵と戦う彼らに、安息という時間は存在しない。そう、日常であっても。


「あんたら!歯を磨いて、着替えたら、早くご飯を食べて頂戴!遅刻するわよ!」

「はーい、寮母さん。」


そして、今日も一日が始まる。


「なぁ、あの家に突き刺さった奴、あのまま寝てるけど、起こさなくていいのか?」

「誰か引っこ抜いて直してきて!」

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