第1話

工藤琥太郎(36歳)は独身サラリーマンだった。未来永劫の独身貴族であり、童貞のままだ。

どうでもいいが「童貞」と言っても、挿入したことのない意気地無しではない。恋人のアワビに自分の本マグロを挿入しようとしたが子供が出来そうだったのが怖かったからか、マグロからサバの子供並みになったので挿入出来なかったのだ。「意気地無しではない」と、彼は語る。

年中無休の職場の合コンや宴会には欠かさず参加し、同期から誘われる高校のクラスメイト達の会には最初の一、二回しか行った事しかないのにキャバクラに誘われたら忙しくても行くかなりの遊び人だ。

当然だが家には誰もいないので、夜のお友達(エロ本)が沢山ある。そのためか、本棚からはみ出したお友達が、一つ以上テーブルの上に堂々と箱ティッシュと置いてある。

そんな彼は、仕事に対しては超一流の熱意があった。いわゆる「社畜」だ。そのため若いが、9課ある中の2課の課長にまで上り詰めた。

仕事熱心な時の彼は語る。

「私は独り身だから過労死しても心配されない。だから社畜になってもいい。」

そんな彼が家では自慢出来ない事をしているが、2課の課長になったのは奇跡か必然かはわからない。しかしこれだけは言える。ド変態の遊び人だと。

今日は誘われたキャバクラ「TUA」へ行くのであった。

会社から出ると誘ってくれた後輩が待っていてくれた。

「悪いな待たせて」

「いえいえ一人で行く勇気が無くて……」

苦笑いしている後輩の何気無い一言に琥太郎は「だから俺を誘ったのか」っと感心していた。

「さてこれから行く訳だが、行く店の行き順はわかんの?」

後輩にキャバクラ通りとの二つ名のある通りに行く為、とりあえず歩きながら聞いた。

「わかります。前に行ったお店の近くです」

後輩はちょっと遅れて歩き出した為に早歩になりながらも答えた。

「前に行った店って言うとトルードだったけな?」

キャバクラ通りには20くらいのキャバクラやクラブが並んでいる為、ある程度のお店は覚えられるが激戦区のこの通りはコロコロと店が変わる。

「ひょっとしてトルード潰れたのか?」

琥太郎はそこには良く通っていて、お気に入りの店だっが潰れたのかとひやひやしていた。

「先輩は過ごいですね…そうなんですよ……潰れたんですが、オーナーさんが変わっただけなんです」

後輩は苦笑いで先輩の質問に答えた。

「そうか…今日はパーっと景気良くやるか!」

そんなこと言っているうちに目的地に着いた。

外装はあまり変わっていない店だったがキャバクラ感が他の店よりも際立っていた。

「先輩お先にどうぞ」

後輩はそう言うと琥太郎を先頭に入店した。

内装も変わっておらず、琥太郎はホッとしていた。

受付を済ませると、指名したお気に入りのキャバ嬢と席に着いた。

後輩は自分の指名したキャバ嬢にウォッカを頼むと、後輩は指名したキャバ嬢が水や炭酸水で割ろうとしていた時に止めて、ロックで飲みまくった。

カッコつけで飲みまくったみたいだが、結果は明日は二日酔いになっていそうに泥酔した。

琥太郎は後輩に気が取られてあまり楽しめなかったが、後輩をこのままにしていると面倒なのでタクシーを呼んだ。

二人分の料金を現金で払い、外で後輩と待っていた。

電話予約してタクシーは数分で来た。運転手は白髪の40歳後半の男で、千鳥足の後輩を琥太郎と一緒に運び、タクシーの後部座席に乗せると、

「ありがとうございます。では後はおまかせください」

そう言うと後輩を乗せたタクシーは琥太郎を置いて、行ってしまった。

「さて、俺も帰るか」

そう言うと琥太郎はイヤホンをしながら帰路に着いたが、後ろから居眠り運転をしていた白いトラックが突っ込んできた。当然、イヤホンをしていた琥太郎は後ろから跳ねられ、白いトラックのフロントをべっとりと赤く染めた。

36歳、独身の工藤琥太郎は交通事故で呆気なく死んだ。

しかし彼は、異世界に転生し風俗商会の女主人となり、けも耳っ娘や悪魔っ娘、スライム娘などのモンスター娘と遊んだり店の経営やキャバ嬢を狙う輩と戦ったりする事は知らなかった。

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