世界の終わり
深夜 酔人
二人の世界
「ねえ、もうすぐこの世界が終わるよ、歩美」
歩美は動かない。ただ少しだけ微笑みながら、眠ったように目を閉じている。その顔を私は覗き込む。陶器のように白くつるりとした肌。紅梅のように鮮やかな唇。しなやかなまつ毛……その全てが真っ赤に濡れた空に侵食されている。その様は不浄の地に現れた女神のようだ。
私はそっと歩美の肩に手を乗せ、ゆっくりとその体に這わす。細くも強い腕。私を包み込んでくれた腕。それも今は動かない。私は快感に悶える。自然と口角が上がってしまう。この人と最後が迎えられて幸せだ。そう私の五臓六腑が訴えている。
だんだん空は赤から黒へ変わっていく。綿菓子のような雲がぷかぷか浮いている。私の頭もふわふわしだした。今なら何も怖くないかもしれない。喜び、悲しみ、そして罪悪感までもが消えていく。
こめかみに冷たい感触。
頬に伝う涙を無視して。
バイバイ、この世界。
校舎に空虚な破裂音が響く。
「……次のニュースです。昨日未明、○○県の△△高校で女子生徒2人の遺体が発見されました。警察は銃の指紋等から、1人は自殺、もう1人は自殺した女子生徒による殺人と見て捜査を進めています……」
世界の終わり 深夜 酔人 @yowaiyei
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