第7話 あの腕のなかに

 離婚調停は私が手続きしたんじゃない。


 早く解決して新しい女とどうにかしたいアホ旦那が始めたことだ。


 月一回ペースで裁判所で話し合いが行われるんだけど調停員の冷ややかな態度に戸惑った。

 

 調停員の第一声は「離婚するかしないかは当人同士の意思で二人とお子さん達にとって一番良い道を探していきましょう」なんて言われて気を許しかけた。


 そのあとはすごく偏見的で旦那側の意見しか聞かない調停員に嫌な思いをした。

 出産して体型が変わったのが許せずもう愛せないと旦那が言っていると調停員から告げられ屈辱的だった。


 旦那が養育費を払うだけありがたいと思えともいわれた。

 養育費の金額が安いのも基準の数値は40年以上前に出来たものだからしかたない。

 不満ならナントカ運動でも起こしてあんたが世の中を変える努力をしろとか到底無理じゃないかと思うことをツラツラと言われた。


 大体アホ旦那に選択肢はない。

 浮気して裏切った側が擁護されるなんてひどいと思った。

 

 浮気されるアンタが悪いとも言われた。


 気持ちが参っている。


 勝也先生の腕のなかは安心できたなあ。

 

 お父さんもお母さんも何年も前に病気で死んじゃってるし一人っ子で相談できる人があまり近くにいない。

 

 旦那の仕事の転勤でここに住むことになって。


 学生時代の友達に相談するのも気が進まなかった。

 なんだか惨めで。

 

 一人で責任があることを決断しなくちゃならないプレッシャーがずっとあったから。


  心が…折れそうで。


 勝也先生に抱きしめられた感覚がよみがえってきた。


 仕事探しを頑張ろう。


 そう思える元気を勝也先生がくれた。

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