今日からミラクル殲滅ライフ

韮崎旭

今日からミラクル殲滅ライフ

 これはきっと病状記録。

 飛行機雲から死滅する、雨、殴り書き、静けさの不在、失踪。行旅死亡人、身元不明遺体、肉片、夜中にも昼にも腐敗。

 残念に思う、これを書くことを、君の手にわたるものであるべきではない。私が書き記すものは、以下の理由で破棄されるはずだったのか、とうに忘れてしまい、ウサギのはく製の腹を裂いて動物の死骸で、まだ鮮血がさめきってないようなやつをおがくずの代わりに押し込んでいる。とても不潔。だから真似しないほうがいい。

 列車の軌道内への立ち入りによって、遅れている告示、電光掲示板の不透明、遺書の青。絵具のように悪趣味で浅薄な遺書は、塗りたくられた壁の養生テープで、意識の表面に貼り付けた。

 

 もう二度と意味のあることはしない。誓った理解は愚劣な信仰。


 街道、旧道となって今はいますがそこにキンモクセイが植えられていて、その下でよくバッタを埋めたものだ。どうしてか? 有害だからさ。

郵便の封を切る。二度と、こない静かさを、見ている、できることはなく、すべきこともなく、逃れる方法もなく、些細な幸運もない。不幸にも私は死産ではなかった、だから手紙の封を切る必要がある、キンモクセイの枯れ木を薪に、ミルクティーを持つ手が、あまりにも長い間有害な主に動物質の騒音にさらされてきたせいで、震えてしまうのが耐え難く苛立たしい。如何して滅亡しないのか? 彼らや人間の平然と生きる理由を、知りたくもない。

 平然と生きられないものは自殺して残っていないから、無遠慮にも生きることができる者だけが人間たちを形成するから、まだ自殺していない、生きることができない人間は、発狂すら得られずに、暗い部屋で耳をふさいでいる。ほかに術がない。

これはきっと何らかの回想。

 絶えず人間の気配のする家屋で、死にそうになる混乱の、絶えず人間の騒音に満ち溢れる家で、幻聴か人間かの区別を日に日に失っていった人間の、独り言を、延々、壊れたラジオよりうっとうしく、垂れ流す人間の機嫌を取ろうとした哀れで無様な人間の、人間になり損ねたまま存在したなにかの、病状記録であり、回想。

 思い出すのもおぞましい、人間の声、抑揚。吐かないように気を付ける必要は、体質上あまりなかったけれど、頭痛は、不当な筋の緊張は、慢性的な肩こりなどの不快な症状は、妄想的なありようは、明らかに惹起されたし、何もいつも読み取れないから、読み取ろうと試みる、その端々にその試みの失敗が表れており、私は望ましくないものだったといやというほど認識する。

 なぜ、お前にのぞまれる必要があるのかとい、そんなものはなく、退路もなく、行く末は暗く、現在は真っ黒で、自分の吐いた汚い言葉や意味内容で、不愉快な溺れ方をして、もう水面は見えない。


 何物にも誓われない誠実の遺骸を、たまに思い出すことができたなら、少しはましだったのかもしれない。欠陥品というには陳腐な、病状をここに書き留める試み。

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