第10話 砂漠の大地
95号を南へ下っている。
ここはオーストラリアという大陸の国道。
ひたすらまっすぐな道が伸びる。
堤防幅500メートルほどの川を横切る。
周囲はうっそうとした森。木々の高さは、
5メートルから10メートル程度だろうか。
季節は冬でひんやりしている。
かつてここは、砂漠だったらしい。
火星は数万年かけての改造計画により、
居住が可能となっていたが、その技術が、
逆に応用されている。
火星はまだ完全に緑化されたとはいえないが、
火星で培われて地球に応用された技術が、
さらに洗練されて火星で試される、という
技術の循環が起きていた。
水星や金星は、まだ居住可能となっていない。
宇宙世紀前は、宇宙よりも、基本的に惑星上
で人類は暮らすもの、と思われていた。
しかし、予想以上に宇宙空間での居住が
うまくいってしまい、惑星の改造は全体的に
予想されていたほど進んでいない。
水星や金星などは、惑星改造の労力の割に、
最大でも地球と同程度の人口しか住めない
のもあって、かなり安価な改造法が
見つからない限り、費用対効果が見込め
なかった。
半獣半人座星系との中間都市、その
周辺やその経路上の都市近くで、かなり
の資源が見つかったこともあり、惑星は
資源よりも保存の方向に向かっていた。
そのため、地球上の人口も、今や10億人
程度になっていた。かつて最盛期は、
1000億の人が暮らしていたが。
ディサ・フレッドマンは、95号を
ゆっくり走ったり、歩いたりしている。
上空100メートルほどに、移動住居ラウニ
が並走している。
余裕があるときは、今回のように、ラウニ
から降りて、道を移動したり、海を泳いで
移動したりする。
どれだけ移動しても、そこから同じ距離を
移動してまた家に戻る、ということを
しなくてよいので、かなり気楽だ。
疲れたら、家を呼べばいい。
この周辺は、1万年ほどかけて緑化され、
いったん都市化され、そのあとまた再び
緑化されている。
人口最盛期にこの周辺も市街となって
いたらしいが、今はその面影もない。
昨日はけっきょく、10キロほどのカツオ
を、ディサは2匹釣った。夕食にタタキにして
二人ですべて食べたのだ。
ボム・オグムは、30キロ台と40キロ台と
50キロ台をそれぞれ一匹づつ釣って、
大満足のようだった。
釣りは、釣れるまでは比較的のんびりした
感じだが、当たりがくると、けっこうな
修羅場と化す、とディサは感じた。
30キロを超えると、一人で引き上げるのは
難しい。そして、海水をかけてあげながら、
重さを計って写真を撮って、すぐリリース。
巨大なアジは、引き上げると怒ったような
顔つきをしている。作業していると目も
合ってしまうので、これが地味に怖い。
食うならともかく、釣り上げて逃がす、
怒っていない訳がないだろう。
ディサも写真どう? と勧められたが、
自分が釣ったわけでもないし、それは
お断りした。カツオは一緒に写ったが。
そして、最後に引っかかったのが、ゆうに
1メートルは超えていそうな大物だった。
30分ほど格闘して、船の近くまで
引き寄せたのだが、とても二人で引き上げ
られる雰囲気でない。
ディサが海中に入って写真を撮り、
ロッドからリモートで針を外してリリース
したが、ボムは少し残念そうだった。
海中で見たその魚は、恐ろしい形相を
していた。
そのあと島に戻り、ボムと別れ、彼女は島の
ホテルに泊まり、ディサは夜通しこの大陸へ
移動して来たのだ。
ジョギングと歩くのにも飽きてきたので、
適当に距離を決めてダッシュしてから、家に
戻ることに決めた。16本ほど。
このあとこのまま道なりにパースという
村に寄り、そこから大陸を横断して、シドニー
という町に寄る。その後、ニュージーランド
という島へ向かい、
そこでの探査を終えると、北上して海上都市
ムーへ向かう。そこから宇宙へ上がり、
探査の状況報告と、研究の状況報告を行い、
ついでに実家に寄る予定だ。
ちなみに南極大陸は、担当地域ではない。
現在このオーストラリアという大陸は、
アボリジニという民族の末裔によって管理され
ている。宇宙世紀開始の数万年まえから、この
アボリジニが住んでいたらしいのだが、
宇宙世紀開始前後の数百年間、他の民族が
やってきて、土地をほぼ奪われるかたちに
なってしまったらしい。
同じようなことが北米大陸でも起きていたが、
入植していた北米の国が内乱等により
崩壊したことに合わせて、この大陸でも
変化が起きた。
世界的にも先住民に土地を返す動きが活発と
なり、宇宙への移民が始まったのもあって、
土地を返した人々がたくさん宇宙へ移った。
当時は、世界3か所の海上都市の宇宙
エレベーターを使い、人々が行き来して、
宇宙開発ラッシュとなった。
それぞれ世界が3グループに分かれて、
共に先を争いながら宇宙への生活領域を
広げていったのだ。
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