Nightmare Before A

域守ハサミ

悪夢の前に

ここはどこだ?

俺はいつからここにいるんだ?

何も思い出せない。

時間が意味をなくし、空間は無限の広がりを持ったように感じる。

光でも、影でも、無明の闇でもないものが視界を満たす。

嗅覚疲労で感じないはずの空気自体の匂いでさえも、ない。

暑くもなく、寒くもない。

何も感じないことを感じる。

五感が閉ざされた様な閉塞感だが、不思議と、不安はない。



『――たいか?』

不意に声が聞こえた。

静寂になれた耳には刺激が強くて、一部が聞き取れなかった。

『生きたいか?』

生きたいか?

別に死にかけてはいないはず。

面白いことを聞く。

――いや、待てよ?どうだったかな?

『生きたいか?』

なぜだろう?

今のが最後の質問に思える。

抑揚もないのに。



生きたい。

なぜだかわからないが、生きたい。無性に。

『そうか。なら、選択しろ』

何を……?

次の瞬間、白いものが世界に満ちた。

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