暇潰しがてらに夜話しましょ

影宮

第1話 傘を忘れて

 天気予報てんきよほううそいた。

 れると言ったのに、真逆まぎゃく土砂降どしゃぶりのあめは、おとくだけでもいきる。

 かさい。

 だれかのかさ勝手かって使つかやつほど、自分じぶん馬鹿ばかでもない。

 まぁいいだろう、と他人たにんかさにするのをていた。

 ある意味いみ正解せいかいだろう。

 他人たにんこまろうと、自分じぶんほうはそれで解決かいけつするのだから。

 その連鎖れんさ今日きょうながめるしかない。

 その正解せいかいえらんだ結果けっか、また他人たにんかさねてえらんで、またまたこまった他人たにん真似まねるようにえらんでかえる。

 最後さいごは、かさてにかさのこっていない状態じょうたいだから舌打したうちする男子だんし高校生こうこうせいだった。

 いつ、かえれるだろうか。

 男子だんし高校生こうこうせいはまたべつ正解せいかいえらんでここからはしった。

 れてもかえれればいいのだ。

 風邪かぜくだろうが、それは自分じぶんには関係かんけいない。

 そんなこと延々えんえんかんがえながら、あめひとうごきをていた。

 すると、となりらない女性じょせいった。

かさいんですか?」

「ええ」

「コンビニにこうにも、このあめじゃおなじですものね」

「はぁ、、、」

「このかさ使つかってください」

 されるかさとその女性じょせい交互こうごた。

 ありがとう、とれないのはその女性じょせいかさをその一本いっぽんだけしかっていないからだ。

 女性じょせいにとって、それは正解せいかいか?

 親切しんせつ正解せいかいだろうが、しかし、それではれてしまうし不正解ふせいかいのようにおもえる。

にしないでください。わたしは、かさ必要ひつようないんです」

「どうしてですか?」

「ニュースをましたか?」

「いえ、、、」

くるまには、けてかえってくださいね」

 女性じょせいはそういうと、かさをこののこしてあめなかあるいていった。

 必要ひつようない、わけがない。

 それでも使つかわなければ女性じょせい親切しんせつ無駄むだにするだろう。

 かさひらくと、あめなか出来できるだけはやあるいた。

 かさがあっても足元あしもとれてしまう。

 それでもいよりはマシだ。

 女性じょせい感謝かんしゃしながらも、いえ帰宅きたくした。

 そして新聞しんぶんひろげた。

 コーヒーを椅子いすすわったところで、はいった記事きじ

 先程さきほどかさしてくれた女性じょせいが、くるまかれたという内容ないようだ。

 昨日きのうのことが新聞しんぶんに、記事きじになるのだから、、、。

 昨日きのう、その女性じょせい事故じこんだ。

 そして、今日きょう女性じょせいはこのかさいた。

 おもかえすと、ちかくの電柱でんちゅうにはだれかがいたはなあめたれていた。

 翌日よくじつかさってその電柱でんちゅうき、あたまげたのちかさかえした。

 りたものをかえすだけの行為こういだが、周囲しゅういひと不思議ふしぎがったをしていただろう。

 幽霊ゆうれいだったんだと、あのとき気付きづけなかったのは、あめのせいだったのかもしれない。

 かえみちたことのみせった。

「いらっしゃいませ」

 そのこえはこのまえいた。

「あぁ、かさかえしてくれてありがとうございます」

 あたまげる女性じょせいにつられて自分じぶんあたまかえした。

「このみせ幽霊ゆうれいみせですか?」

「いえ、幽霊ゆうれいでも人間にんげんでも、妖怪ようかいでも、おにでも、なんでもますから。」

「そうなんですか」

「どうぞごゆっくり、夜明よあけをおください」

 くびかしげるのをにしないでさっさとおくへとんでった。

 かえればもうそこには出入口でいりぐちというものはない。

 仕方しかたなく、おくへとあしけた。

 あるせきで、手招てまねきをする男性だんせいがいる。

 まねかれるせきへ、まよいもなくすわった。

はじめてのおきゃくさんだね」

常連じょうれんなんですか?」

ぼくはね。このみせは、一度いちどはいったら夜明よあけまでられない仕組しくみなのさ」

「だから出入口でいりぐちえたんですね」

「いいや、もとからあんな場所ばしょ出口でぐちなんかなかったさ」

 わら男性だんせいは、さっきの場所ばしょ指差ゆびさしながら、冗談じょうだんのようにいう。

「なら、貴方あなた何処どこからたんです?」

ぼくこうから」

 またべつ場所ばしょ指差ゆびさす。

 ゆびさきにはかべしかなかった。

「ありませんね」

「そう、いのさ。このみせ入口いりぐちはどこにでもあるが、出口でぐちはない。あきらめててばられるさ」

「いつごろからいるんですか?」

「15ねんまえから」

「15年前ねんまえ、、、ですか?」

 15ねんってられない?

 それなら、自分じぶん何年なんねんたなければいけないのか。

いたこと、ないかい?15年前ねんまえ行方不明ゆくえふめいになった7さい少年しょうねんいまつからず」

新聞しんぶん記事きじですね」

「その行方不明者ゆくえふめいしゃなんだよ」

「はい?」

「いや、だから、ぼくはもうあきらめられた当時とうじ7さい少年しょうねんさ」

「では、このみせからればぐにでも、、、」

無駄むだ無駄むだられやしない。15ねんった。あきらめられた時点じてんわり。ま、きみはただ意識不明いしきふめい病院びょういんるだけだから大丈夫だいじょうぶだろうけど」

意識いしき不明ふめい、、、!?」

かさしてくれた幽霊ゆうれいさんがったのに、きみくるまねられ意識いしき不明ふめいんでないだけマシ。ぼくはとっくのとおにんだけど」

 みずみながらをヒラヒラとって、無理むりなんだとう。

 何故なぜ、この男性だんせい自分じぶんのことをよくっているかはわからない。

 それでもっていることはうそではないようにかんじた。

 みせはいってから、どうにも感覚かんかくがない。

 と、いうことは、そういうことなんだろう。

かえれますか?」

きみかえれるよ。夜明よあけにね」

何故なぜ夜明よあけなんですか?」

「ここにいるあいだはずっとよるだから。けることイコール出口でぐちえる。きみ夜明よあけは意識いしきもどすこと。このみせでは夜明よあけってってるだけなんだけどね」

「どうしたら、かせますか?」

ぼく夜話よばなしいてくれるかい?きながらっててくれれば、夜明よあけはぐさ」

「わかりました」

 うなづいたら、男性だんせいうれしそうにわらった。

夜明よあけまでいくつかたれるかな」

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