蓮の花
@amezisto
第1話
小さな村に生まれたマリは、たくさんの兄弟と仲良く暮らしておりました。
マリの家は古くからの仕立て屋さんでした。
ある時見知らぬ女の人をお母さんは連れて来て、こう言いました。
「マリ、あんたの新しいお姉さんだよ。すごく裁縫が上手いって言うんだよ。仲良くするんだよ。」
「はい。お母さん。お姉さん、よろしくお願いします。」
素直なマリ。
お母さんは言いました。
「新しい生地の買付でしばらくは帰れない。店のことはお姉さんとあんたに任せたよ。」
「はい。お母さん。気を付けて行ってらっしゃい。」
お母さんがいなくなると、優しかったお姉さんはみんなを怒りはじめました。
「私の言うことを聞けないやつは、この店から出ていけ。」
次々と兄弟をいじめ、怒鳴りました。
みんなとマリは泣きました。
いつもいつも、お姉さんの顔色を見て暮らしていました。
ある日とうとう、みんなが出ていくと言い出しました。
マリは迷いました。何故なら、大好きなお母さんに留守を頼まれたのです。
このまま、みんなと出ていけたらどんなにいいでしょう。
「お母さんが帰ってくるまで、がんばりましょう。」とみんなを説得しました。
「もう我慢できない。大好きなお母さんが連れて来た人だけど、いつも怒鳴って私達をいじめるのよ。」
「あんなひどい人をお姉さんだと言って、私達を置いて出ていったお母さんなんて、もう信用できない。」
「ぜんぜん服なんて作らないじゃない。裁縫が上手いって自分が言ってるだけでしょ。」
みんな、口々に不満を言いました。
「わかったわ。みんなの気持ち。さようなら。みんなはここを出ていって楽しく暮らしてね。」
マリは笑顔でみんなを送り出しました。
「せいせいしたわ。大勢いても、食費がかかるだけで何の役にも立ちゃしないんだから。仕事なんて私だけで出来るわ。」
とお姉さんは言い、清々しい顔でした。
それからしばらくは、お店の常連のお客さんが来てくれました。
お姉さんは口だけで、仕事はマリ1人でこなしていました。
マリはだんだんお客さんの前でも笑えなくなっていきました。
だんだん、お客さんが来なくなりました。
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