第42話 宿へ。そして、救出計画。 ー2
コンコン
「秀治ーー、いるかー?」
蓮斗は秀治の部屋を2回ほどノックしながらそう言う。
「あー……蓮斗か。ドア開いてるから入ってきていいぞ」
秀治は部屋の中から蓮斗に向かってそう答える。蓮斗は秀治がそう言った後、ドアを開けて部屋の中に入る。蓮斗が秀治の部屋を訪ねたのは、「ザティック盗賊団」に捕らわれている奴隷を助け出す為の計画を練るためだ。自分が知っていて見逃すのもちょっと胸糞悪くなるからな。全てという訳にはいかないが、助けられるものは助けたい。
部屋に入ると、秀治は備え付けのソファーに腰を掛け、何やら本を読んでいた。
「……何読んでるんだ?」
蓮斗は宿に本があったか疑問に思いながらもそう尋ねる。
「ああ、これはこの世界の事について書かれた本だ。大雑把にだけどな。これはこの宿の近くにある"レフェリタ"で借りてきたものだ。まあ所謂図書館みたいな所だ。本を借りる時に金がいくらかかかるけど」
秀治はそう言いながら読んでいた本を閉じ、蓮斗の方に顔を向ける。蓮斗も向かい側のソファーに座りそれを見て、元々秀治にする予定だった話を切り出す。
「そうか。今度機会があれば行ってみるか……。所で、秀治。お前に折り入って相談があるんだけど……。いいか?」
蓮斗の声音に真剣味が増した事で秀治もよほど大事な話なのだろうと察し、聞く態勢を整える。
「ああ。いいぞ」
「悪いな。では早速だけど……。"ザティック盗賊団"って知ってるか?」
「ザティック盗賊団? ……知らないな。聞くからに物騒な名前だが」
秀治は初耳だったようで、首を傾げながらそう答える。
「そうか……。実は、そこに捕らわれている奴隷を助け出したいんだけど……。秀治もついてきてくれないか?」
蓮斗がそう提案すると、秀治は何やら難しい顔をして考え出す。蓮斗は秀治のその様子を静かに見守る。蓮斗自身、これはとても危険の伴うことだと承知している。秀治に頼んだからと言って確実についてきてくれる訳ではない。最悪蓮斗一人でもどうにかできるのだが……。出来れば仲間が欲しいところだ。
「……ザティック盗賊団、か。聞くからに盗賊の集団の名前っぽいが……?」
「ああ。盗賊の集団だ。それで間違いない」
「ふむ……。別についていくのには構わないが……。その"ザティック盗賊団"の規模はどのくらいなのか……蓮斗、分かるか?」
秀治からついて行ってもいいという言葉を聞き、ホッと息をつき安心した蓮斗だがその次に飛び出した秀治の質問は蓮斗も調べていない為、分かっていなかった。
「いや……。規模の方は分かっていないが拠点の方は分かってる」
「拠点か……。それはどこだ?」
「"グライシアス鉱山"だ」
「"グライシアス鉱山"っていうと……。ソリューカの森の奥に行ったところにある場所か……」
「ああ、そうだ」
「……何故奴等……"ザティック盗賊団"は"グライシアス鉱山"に拠点を構えられるんだ?」
蓮斗は秀治の質問の意味を上手く汲み取る事が出来ず、首を傾げる。
「どういうこと?」
「これは俺がさっき読んだ本に書いてあったんだが……グライシアス鉱山は商業ギルドの管轄に入っている。あそこはギルドから月に一度冒険者が派遣されて調査されるんだ。盗賊達が容易に立ち入ることは出来ない筈なんだ」
秀治がそう言うと、蓮斗も秀治の言いたい事が理解出来たようで。
「……ということは、商業ギルドと"ザティック盗賊団"が結託していると……?」
「そういう事だ」
そうなると更に厄介なことになりそうだ。ザティック盗賊団に謎の商業ギルドの存在……。しかもギルドには国も介入出来ない。正確に言えば証拠がなければ駄目なのだ。しかもガルンでは誰が国王陛下と第一王女レミリーの後を継ぎ、国を引っ張っていくかで貴族同士が揉め合っている。当然ながら国は機能してないし、介入など期待できない。これは念入りに作戦を練らないとな……。
「秀治。何かいい作戦はないか?」
蓮斗が秀治にそう問いかけると、秀治から逆に質問がとんでくる。
「その前に蓮斗。仮に俺達が奴隷を解放できたとして、その後はどうするんだ?」
痛いところをつかれた蓮斗だったが、蓮斗もそれについては考えがあった。
「……街を作ろうと思う」
「……これはまたぶっ飛んだ発想だな……。……何処に作るんだ?」
「……グライシアス鉱山から少し行った所に開けた場所がある。湖も近くにあって人もあまり通らないからいいと思う」
蓮斗が秀治にそう提案すると、暫く秀治が難しい顔で考え込む。少し経って、結論が出たのか顔を蓮斗の方に向けた。
「……うん、取り敢えずその方向で行こう。それで作戦の方だがーー」
蓮斗と秀治はその後も夜遅くまでザティック盗賊団をどのように攻め落とすか、その作戦について話し合ったのだった。
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