第34話 蓮斗の悩み。そして、解決? ー4
見える、オーガの変異種の動きがーー。
蓮斗は超スピードで襲ってきたオーガの横をすり抜ける。と同時に、魔法"
「"
蓮斗は背後に居るオーガの変異種に向かって三日月の形をした炎の刃を飛ばす。オーガは自分が背後にいると気づかれたとも思わなかったが故に今の攻撃を避けきれず、オーガの変異種の右腕が切断される。蓮斗は一撃で仕留めることが出来ず、悔しそうに舌を鳴らす。オーガの変異種は右腕を切断されても依然として立っており、その顔は苦痛にも歪んでいない。普通の魔物なら痛がるはずなのだが……。
蓮斗は目の前のオーガがただの変異種だと思えず、頭の中で疑問が膨らむ。仮にただのオーガの変異種なら、あそこまでの動きが出来るとは到底思えない。絶対に何かしらがあるはずだ。
蓮斗に考える余裕が出来たためか、先程まで気にしていなかったものがどんどん疑問になっていく。そして、その疑問の数々はオーガの変異種の異変によって証明されることになる。
「ギギギギ……!? ギギィィィィィ!!」
今まで苦悶の声すらあげなかったオーガの変異種が突如苦痛に顔を歪めながら呻き声をあげだしたのだ。黒かった身体も元の薄い緑色に戻っていく。そして、その原因となった黒いオーラが集まって……人の形を成した。
そいつは女で、全身を黒いコートのようなもので身を包んでおり髪の毛は紫色で瞳は冷淡な青色をしており、頭には角が二本生えていた。明らかに人間族ではない。
だが、蓮斗には分かった。オーガの変異種以上に異様なオーラを纏っている目の前の男がどの様な存在なのかを。
「……お前は魔族か……!?」
そう。目の前の女はラノベでも人間の敵対的な存在で度々登場する魔族の容姿にそっくりなのだ。故に蓮斗は女に対してそう問う。
「……そうだ。我は魔王軍の幹部にして序列26位のヴァーナム=ラヴィだ……。それにしても……勇者の一行に魔族を知っている者がいるとはな……。貴様、名は?」
「…………柏沢蓮斗だ」
序列だかなんだかわからないが目の前の女、ヴァーナムは魔王軍の幹部らしい。それはそんな簡単に明かしていい物なのだろうか……?
それにしても、目の前の女は底が計り知れない。ここはどうにか逃げ出さないと……。蓮斗は恐怖を感じそこから走り去ろうとするが、その前にヴァーナムが蓮斗を引き留める。
「まあ待て。何も貴様を襲う気は無い」
「……いや、そう簡単に信じられる訳がないだろう」
俺はヴァーナムに対してそう言い放つ。事実、オーガを変異種に仕立てあげ、操って俺を襲っていたやつに襲う気は無いと言われたところでそう簡単に信じられるはずがない。
「……我は人間の住まう国であるガルンを攻め滅ぼそうなどとは考えておらん。元より興味も無い。我は魔王様に命じられてガルンに偵察に来ただけだ。他意は無い。だが、貴様には結構興味が沸いてきたな……。見たことのない魔法もあったしな……」
ヴァーナムはそんな事を言いながら、興味津々な目で蓮斗を見ていた。先程感じられた異様なオーラが今は微塵も無い。蓮斗はふと気になった事を思い出し、今なら尋ねられるかもしれないと思い、ヴァーナムに問う。
「……俺が勇者一行だと何故分かった?」
「勇者一行には何か他の者には無い、特殊な気配を感じるのだ……。それで分かったのだ」
説明になっていないような気もするのだが……。それにしてもこの魔族は一体……? 何処かで見たことがあるような……。
蓮斗が初対面の相手に対してそんな不思議な感情を抱いていると。
「……貴様に折り入って頼みがある」
ヴァーナムがそう言った瞬間、場の空気が変わった。どんな頼みなのか、蓮斗は緊張しながらもそれをしっかりと聞こうとする。
「……我と友達になってはくれまいか?」
…………………………は?
蓮斗はその言葉を聞いた瞬間、先程までの緊張が嘘のように大きく口を開けたまま固まってしまうのだった。
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