第5話 窮地。そして、絶望と彼らの運命。

 二十階層。ボス部屋。目の前にフードを被り両手に鎌を握り死神のような姿をした巨大な化け物が佇んでいる。

 「レギーロさん!! あ、あいつはいったいなんなんですか!!」

 高峰が思わず声をあらげる。本能的な恐怖に刈られて冷静さを欠いたが故の行動だ。

 かくいう俺も足が少し震えている。

 「……あいつは90階層のボスです……。今のあなたたちでは全く歯が立たない相手です。かくいう私も全くなのですが。……魔物を際限なく召喚し、使役する。同時に何体でも操れるらしいです……。あと、使役しながらの攻撃も可能みたいです」

 ……何なの!?その魔物!!目の前の奴ってそんなにでたらめな奴だったの!?

 俺はレギーロから説明?を受け、さらに困惑したが……。

(……でも、90階層のボスが何故この部屋に……。まるで、導かれて来たみたいな……)

 俺がそんなことを考えていると、

「あなたたちは一旦後ろに下がって下さい!!…騎士団員は私と連携を!!……あと、一人あの子達の護衛についてください!!」

「「「「「了解!!!」」」」」

 騎士団団長の言葉に騎士団員が返事をし、素早く陣形を整える。

 すると、死神みたいなやつのほうもなにやら呪文を唱え始め、小型の死神みたいな魔物を召喚している。次から、次へと……。その数は100匹を悠に越えていた。

「来ます!!!」

 レギーロの言葉を皮切りにして、次々と襲ってくる小型の死神みたいな魔物に対応している。

 だが、召喚する数のほうが多いのか、小型の死神みたいな魔物は増え続けるばかり。

(この状況を改善する魔法は何か無いのか……!!)

 俺は歯噛みしながら必死に考える。このままでは、いずれレギーロと騎士団員たちは力つきて死んでしまう。想像力をフル回転させ、あらゆる物を考える。そして、俺の脳裏に一つの魔法が思い浮かんだ。それを発動するために頭の中で必死に魔法陣を形成する。

 ……よし。できた!!!!

「 封印!!」

 俺がそう唱えると、金色の鎖が床に形成された魔法陣から無数に現れ、小型の死神みたいな魔物と巨大な死神みたいな化け物もろとも鎖でがっちりと抑えた。すると、小型の死神みたいな魔物が全部消え、巨大な死神みたいな化け物だけが残った。

「今です!!」

 レギーロは心の中で、柏沢に感謝しながら、攻撃の指示を出した。

 「風よ…敵を切り刻む刃となりて、打ち倒せ……ヴァン・ラム!!」

 レギーロの魔法攻撃を皮切りに、騎士団員達が一斉に魔法を放ち始めた。

「「土よ、数打ちたりて敵を穿て……テール・ランス!!」」

「「水よ、我が呼び掛けに答え集いて群れをなせヴァッサー・ナーデル!!」」

「炎よ、燃え盛れ……燃え狂え……敵を打ち倒す力を成せ……フレイム・ブロウ!!」

 死神みたいな化け物を風の刃が切り裂き、無数の土の槍が貫き、無数の水の針が容赦なく突き刺さった。

 しばらく魔法を打ち続け、途中で攻撃をやめた。というよりかは力尽きているという感じだった。すると、そこに死神みたいな化け物の姿はなかった。

 「「「「「「よ、よっしゃーーーーーーーー!!」」」」」」

 俺以外のクラスメイト達が一斉に喜んだ。女子達もささやかだが喜びあっている。恐怖から解放されたお陰か、クラスメイト達は皆一様にホッとして気を緩めていた。

 だが、俺は気配察知でまだ生きていることを確認していたので、

「おい!!まだ終わってねえぞ!!」

と声を張り上げる。だが、クラスメイト達の歓喜に掻き消され誰一人聞いていなかった。

 レギーロと騎士団員達も周囲を警戒している。俺も周囲を警戒しながら歓喜に掻き消されながらも大声をあげていると、後ろの方に気配がした。ヤバい……!!

「遮断!!」

魔法を発動した。攻撃遮断用の魔法だ。クラスメイト全員を対象にする。

「おい……なにやってるんだ?」

と誰かから疑問の声が上がった直後。

ガキィィ!!

く……!重い……!!

クラスメイト達も突然の音に歓喜の声がやみ、音のした方を見ると……。

……なにもいなかった。

クラスメイト達は一瞬困惑したが、すぐに落ち着きを取り戻す。皆が静まった所で俺は魔法を維持しながら言う。

「……やつは、生きている……!気を緩めるな……!」

(それに、この攻撃の重さだと魔物も召喚されて攻撃されている……。しかも姿は一匹も見えない……。クラスで気配察知をできるのも俺だけ……。色々考えてもしょうがない。とりあえずこの状況を切り抜けることだ……!)

「帯電!!」

 攻撃遮断用の魔法に電気を付与する。すると小型の死神みたいな魔物が姿を現したと同時に消え、数十匹の小型の死神みたいな魔物と巨大な死神みたいな化け物が姿を現した。俺達は魔物に取り囲まれており、姿を現した魔物たちをレギーロと騎士団員達が攻撃しようとしたその時ー。

カッ!!

辺り一面が光り、なにも見えなくなった。

しばらくするとようやく見えるようになり、レギーロと騎士団員達の行方を探す。

すると……。

 全身から血を流しながら死にかかっているレギーロと騎士団員達の姿があった。


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