第3話 訓練。そして、初の大迷宮。 ー1

 俺たちは今王宮の謁見の間にいる。国王陛下が昨日話せなかったことを今日話すために、ここに皆を集めたらしい。目の前には、言わずもがな、国王陛下が一段高い場所に置いてある椅子に座っており、今からその話したいことを話そうとしている。

「……ソナタたちに伝え忘れていたことがあった。それは、ここにソナタたちを召喚した目的じゃ」

 ……ああ、そういえばそうだな。まだ俺たちが召喚された目的とやらを聞いてない気がする。

 昨日は自分のチートぶりに大発狂していたので、その事がすっぽりと頭の中から抜け落ちていたようだ。

「儂がソナタたちを召喚した目的は、今この世界で起こっている争いを止めて欲しいのじゃ」

「争い?」

 誰かが疑問の声をあげる。

「……ああ、争いというのは、人間と他種族との争いのことじゃ」

 この世界には6種類の種族がいる。天使族、吸血族、海人族、エルフ族、巨人族、ドラゴン族である。これらの種族は亜人族と呼ばれている。人間の奴隷にされている亜人族もおり、争いが絶えないのも仕方ないだろうと思う。でも、この世界に来て争いというものを目撃したことがないんだが……まあ、でも昨日は疲れ切っていて王宮の各々にあてがわれた部屋にこもりっぱなしだったから知らないだけだ。後から聞いた話だが、俺たちはこの世界の人間族たちよりも能力値が数倍高いらしく、スキルも幾分か強力になっているらしい。それでも、ステータスの最高値は2500だとか。

「人間族はほとんどの亜人族と敵対している。この争いを止めるためには、ソナタらの助けが、力が必要なのだ。どうか……どうか……! 我らに力を貸してくれ……!」

 国王陛下が必死に懇願している。だが、柏沢には妙に引っ掛かることがあった。だが、些細なことなので頭の片隅に留めておいた。

「……はい。おまかせください」

 高峰が代表して答えた。

「そうか……。ありがとう。勇者殿」

国王陛下がホッとしたような笑みを浮かべた。その時レミリーと国王陛下の瞳に暗い炎が宿っているのに気づいたのは柏沢だけだった。



「訓練?」

「はい。あなた方には訓練を受けてもらいます」

 謁見の間を後にした俺たちは、王宮の長い廊下みたいなところを歩きながら、レミリーから訓練についての説明をうけていた。

「あなた方は今のままでは、他種族に力では劣っていなくとも技術で劣り、負けてしまいます。あなた方はまだこの世界に来てから1日しか経っていないのもあって、魔法の扱いや剣術には慣れていないでしょう。それを訓練で解消するのです」

「はあ……。なるほど」

 今受け答えしているのも当然高峰だ。

「具体的なことは騎士団団長から聞いてください……。着きました。ここが訓練場です」

 そう言ってレミリーは目の前にたたずんでいる巨大な鉄の扉を指差した。

「中に騎士団団長と他の騎士団員たちもいると思いますので、指示に従ってください」

 そう言いながらレミリーは重そうな鉄の扉を開け、中に入るよう俺たちに促した。

 中に入ると騎士の甲冑を身につけた人たちが数人待ち構えていた。訓練場の中は殺風景で余計なものが何一つ無かった。壁もなんだかとても分厚そうだった。しばらくすると、騎士団の中から一人いかにもベテラン感じの男の騎士が前に進み出てきた。

「よくお越しくださいました。私は騎士団団長のレギーロ・ルアモンテです」

 ……この人が騎士団団長か。なんか、纏ってるオーラがすごい……。

 俺はそんな感想を抱いた。口調こそ丁寧なものの、全身から放つオーラが他の団員とは一線を画している。

「……では。私はこれで。健闘をいのります」

 そう言うと王女は元来た道を引き返していった。騎士団団長を含め団員が皆王女に敬礼した。しばらくして、王女の姿は見えなくなり、団員は皆敬礼を解いた。

「では、早速訓練を開始しましょう。5班に別れてください。各班に団員が一人つきます。訓練の説明はその団員から聞いてください」

 団長にそう指示され、それぞれの班に別れて訓練を開始したー。



ー訓練を開始してから14日後ー

「今日の訓練は大迷宮に潜りたいと思います。目標は、二十階層くらいですが……。何か質問のある人は?」

「……どこの迷宮に潜るんですか?」

 誰かが疑問の声をあげた。

「ああ、すみません。言ってませんでしたね。初心者向けの迷宮のアリスレナ大迷宮です。……初心者向けとは言っても下に行けば行くほど難しくなります。因みに、100階層まであります。今の君たちだと……40階層が限界だと思います。…皆さんいく準備が終わり次第、王宮の外にある門の近くに集まって下さい」

「「「「はい!」」」」

 こうして、俺たちの初の大迷宮での訓練が幕を開けた。



 

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