先生
@ayuna_ebi
第1話 春
栞ちゃん、春からあんたの学校の先生になったんだって!
あんた遠いんだし朝おくってもらったら?
自宅から離れた学校にかよっていたショウタは母からの提案を受けることにした。
栞ちゃんは県外の大学に進学して、先生になったらしい。4、5年ぶりもっとかな?
母親同士が大親友だったから小さな頃は頻繁にあっていたけど、サッカーしてからは全然あってない。
桜が咲くある日、真っ赤なゴルフに乗ってうちの玄関に朝早くきた。
「おはようございます。」
久々にあった栞ちゃんは、すらっとした美人で控えめな化粧がさらに美しさを際立させていて、びっくりと同時にドキドキした。
「よろしくお願いします。」
と乗り込む。初日は緊張して、栞先生から話かけてくれたことにはいとかいいえしか話せなかった。
それから毎日一緒に車に乗って通うことになった。
学校には母親が連絡してくれて友達も知っていたから、若干冷やかされたがすぐに今まで通りとなった。
朝早めに出て、学校で別れ、サッカー部の部活後、一緒に帰る。
栞ちゃんも美術部の副顧問だし、次の日の授業の準備があるからちょうどいいらしい。
行き帰りの車のなかでは、おもに勉強、進学のことなんかを話しした。
いつも俺の話を真剣に聞いてくれて、勉強のアドバイスをくれたり、栞先生の家で勉強を教えてもらったから成績がドンドンあがっていった。
その頃、サッカー部には熱心に練習をしている先輩がいて、あんまり上手ではなかったけど、コーチからキャプテンを指名された。
おもしろくないサッカー部の少しヤンチャなエースの先輩が俺達後輩をよんで
「お前達はどっち派か?キャプテン派かエース派か決めろ。」
そしてチームは2派に完全にわかれてしまった。
俺はキャプテン派だったから練習中パスがもらえなかったり部室においておいた荷物がなくなったり、嫌がらせが続いた。
エース派のやつらは部活外でも使いパシリや夜遅くまでカラオケ、女の子紹介しろとかキャプテン派のやつとしゃべるなとか無理難題を言われ大変だったから部活を辞める者もでた。
だから、部活の後はイライラしてるかぐったり疲れて車に乗る。栞先生は何も聞かないし、何か話すわけではない。ただ、カーステの音楽を聴いて運転する。
車のカーステからグリーンの歌が流れていた。(だれしもぼくら おもいあぐれ いろんなしがらみ…)
歌ききながら今のサッカー部の仲間たちのことが思い浮かんだ。
(すべてやれているかい)
そう問われて、自分が何もやれてない!その上、この状況に諦めつつあったことに愕然とした。今自分がやれることすべてしてみよう!と決心した。
「俺、この音楽好きだわ。」
「私もよ。ショウタどんなの聞く?今時の高校生わからなくてCDショップのお兄さんのオススメ買ったんだよ。」
「今時って。栞先生だって20代だろ。じゃ栞先生は誰か好きなアーチストいる?」
「アムロちゃんとか?」
どおりで初めて乗ったときにもかかってたもんな。
(もしかして俺機嫌わるい⁈からCD気をつかってくれたんかな。ちがうのに)
と思った。
「ただサッカーしたいだけなのになぁ」
「好きなんでしょサッカー?」
(そういえば俺やめたくはない。)
「サッカーってよくわからないけど、前の人がほとんど点数きめるじゃない?後ろの人がシュートしたらダメなの?」
「ダメってわけじゃないけどそれぞれのポジションが機能して中盤ミッドが相手との駆け引きでいかに裏をとるかでボールがトップに通る。そしてシュートきめるんだよ。トップがではなくチームで一点とる。」
「ふ〜ん、そうだったんだ。」
(そっかそうだよな。チームプレイ大事なんに俺達何してるんだろ。)
次の日から、自主練をはじめた。自分がやれることはやるって決めたから。次の日はまた1人増え、毎日増えていった。しばらくしてサッカー部の2年生がすべて集まっていた。
帰りの部室。着替え中、グリーンの歌携帯から流して皆んなに言った。
「今日から俺達2年生派。先輩たちの派閥争いにもうかかわらない。俺達はただサッカーしょう。」
その後1年生も先輩達の派閥からはずれてうやむやになって解散した。
その年の大会は散々だった。
悔しくてなさけなくって、3年生が引退した後みんなで一生懸命練習した。
悔しくて、もう二度と同じ思いしたくない!
来年、すべてやって後悔ないサッカーしたい!1年生も一緒に!
あっという間に1年が経過して、高校3年生になった。
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