第33話 真宮家side



―真宮家。


「ちょ。何なのこれ…?」


瑠奈がいつものように、リビングのソファーに寝転がりくつろいでいる。すると近くのテーブルに置いていた、愛用の水色スマートフォンから、メールの着信音が鳴っていたので確認すると、普段は友人とのLINE中心のやり取りの端末故に、あまり使われないはずのメールボックスに、数十件もの見知らぬ着信が溜まるに溜まっていた。



『To:君の住所教えて!

文:君の住所教えて欲しいな! 家が大きくてお金持ってれば大歓迎!』


『To:君のスリーサイズ教えて!

文:君のスリーサイズ教えて欲しいな! むっちりむちむち胸が大きければ大歓迎!』


『To:君のお友達教えて!

文:君のお友達教えて欲しいな! 可愛い後輩や綺麗な先輩、よりどりみどりの美少女大歓迎!』


『To:君の家族教えて!

文:君の家族教えてほしいな! 綺麗なお姉さんと君の可愛い妹が居るともっと嬉しいな!』


『To:君のお家教えて!

文:君のお家教えてほしいな! みんなで行けばすっごく喜ぶよ!』



送られてきたメールは特に添付ファイルもなく、何らかの詐欺メールとも言われるURLもなく、全てが単純に文章だけ。しかし君の事が知りたい・君の居場所が知りたいなど、個人情報を知りたがる似たような文章ばかりでとても気味が悪い。うぐぐと唸りながら携帯の画面を凝視していると、二階からパタパタと降りてきた琳が瑠奈の元へかけよって来る。


「瑠奈、良かった。それもしかして、瑠奈も同じの来てたんだ」

「お、同じのって……まさか琳の所にも?」


どうやら琳の端末にも自分と似たような内容のメールが届いたようで、自分の端末を見ながら不安げな表情になっている琳からして、自分達に届いたメールに対し嫌な予感が拭えず瑠奈達の不安を煽る。


「何かこれ、凄い気味が悪いよ…」


送られてきたメールの束は、東皇寺学園の件と関係しているのだろうか。茉莉からは必要以上に東皇寺学園に干渉するなと言われていたが、自分達だけで一方的かつ薄気味悪いメールに対処出来る筈ない。


「あら。二人してどうしたの?」

「茉莉姉、丁度良い所に。これ見て」


丁度聞いて欲しいタイミングで、茉莉が二階からリビングへと降りて来た。琳と一緒に自分達に送られてきた不気味なメールを茉莉に見せる。瑠奈達のメールを見るなり、茉莉の顔は一瞬で険しいものへと変化する。


「何なのよこれ……」

「こんなあらかさまな奴、普段なら見せないよー」


瑠奈達に送られてきた怪しいメールのアドレスは、全て知らないアドレスだった。瑠奈達のアドレスを知っている人間は限定されてるし、本人達も友達以外には全く教えていない。瑠奈達のアドレスを知る手段は限られている筈なのに、何故メールを送る事が出来たのだろうか。


「…本格的にまずい状況になって来たわね」


送られてきたメールを悪い意味で受け取ると、メールを送って来た相手は自分達を監視している・尾行しているぞ、と言う事だ。相手側が尾行や監視と言う言葉を、匂わせている以上無視する訳にも行かない。


「二人共、メールアドレスすぐに変更して。後お金は私が出すから、今日中に端末の機種も番号ごと変更」

「わ、わかった」


入学祝いとして父親に自分専用の携帯端末を買って貰い、デザインも気に入って使いこなしていたのだが、深刻な事件に巻き込まれ掛けてる以上仕方がない。琳も困った表情で愛用してるライトグリーンの携帯端末を見つめている。


「みんなには携帯変えた事、説明しなくちゃね」

「仕方ないよね…背に腹は代えられないし」

「あっ。また着信」


琳の端末から再び不特定アドレスのメール着信が入ったので、今度は三人で確認する。



『To:見つけたよ

文:見つけたよ。僕達の可愛い天使達…。やっと君に会えたね。

ねぇ、君の可愛い小鳥の鳴き声を聞かせて? 君の甘いささやきを早く聞きたいんだ。全ては聖域の思うままに…ね 聖域の支配者』


「ど、どうしよう……」

「……」



茉莉も言葉を言いあぐねていた。アドレス変更を決めたタイミングで、メールを送り込んでくるなどとは何か。これは何者かが予め瑠奈や琳を尾行して情報を入手し、何らかの手段を使って自分達を監視しているとしか思えない。


「琳。あなた一昨日、勇羅君達と母さんのお見舞い行ってたわね」

「うん、その時は篠崎君も一緒に。奏さんの弟さんと東皇寺の話色々聞いたし、奏さん自身は進んで研修先に神在の総合病院選んだって言ってた」


奏の弟ならばシロだ。瑠奈も茉莉も奏とは何度も面識はあるし、奏自身異能力者への偏見を持っていない。彼の弟もまた東皇寺生徒会や宇都宮の話題に対し、明らかな嫌悪感を見せていたので信用できる。


「学園にも平行して、個人で知り合いにも相談するわ。もうこれは私達だけの問題だけでは済まされないわよ…」


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