双子の日
拝啓、猫先生。
遅れに遅れていた冬もようやく間に合い、木枯らしが色づいた木葉を散らしていきます。もう今年も、余白が少なくなりました。
歳末になると決まって今年を振り返りたくなります。
今年もいろいろなことがありました。
毎年のことかもしれませんけれども、振り返ると豪雪、猛暑、天候不順、豪雨、台風、地震、温暖といった、自然災害を思い出します。
震災は規模や被害が大きかったものの、東日本にくらべると被害はさほどなかったのですが、今年は西日本の被害が多かったため、随分と周章狼狽してしまい、意馬心猿の日々を過ごしました。
毎年、漢字一文字で世相をあわわす催しが行われていますが、今年の漢字は「災」でした。
避けて通れるものなら通りたいと思っているのが災難だとおもいますけれども、強く意識するほどに、当たり前のように世の中には多く転がっているものです。
悪いことはゴロゴロしているのだから、いいことがあったらよかったねと素直によろこべる大らかさを忘れないようにしたいものです。
今年の前半は、創作に専念していました。
ファンタジーやフィクションよりも、ノンフィクションに基軸を移しました。
フィギュアスケートは昔から親とともに視聴していたので、マスコミが騒がなくてもしずかにオリンピックを観戦し、長年興味がありながら漠然と見ていただけから、文章にしてみようという気持ちになりました。
下調べのほうが、執筆より倍以上時間がかかり、難儀しましたがその分、より良いものができたかと思いますし、しらなかった知識も増えました。
創作しなければ、まったく興味すら抱かなかったかもしれないことまで知り得ましたので、大いにプラスに働いたと思います。
以前から、知らない世界の話を書くときは、下調べや下準備というものをしてます。執筆よりも調べ物をしているときのほうが実に楽しくて、気づけば創作に全く関係ないのに調べ物をしてしまう癖が付いてしまいました。そこに目的がくっついていればいいのですけれど、そういった目的がないことのほうが多いため、ただ調べるだけで終わってしまうのは非常に残念でした。ですので、創作して形になるのは、自分にとってフラストレーションがたまらず、いいことです。
ただ、一つの作品を作り終えると、心身ともにボロボロになってしまうので、体力のない私はある意味、自殺行為に近いのかもしれません。
後半からは、クイズに熱中しました。
もともとクイズには興味がありました。高校生クイズをはじめ、クイズ番組は数多く視聴してきた流れで頭脳王や東大王も見て、Quizknockにたどり着いたのも、水は高きから低きへ流れるのたとえのように、必然だったかもしれません。
クイズもまた、知識が大事になります。
知識だけでなく、知識を生かして貢献するほうが重要だとおもいます。少なくとも、クイズはその門口に立てるものです。
クイズだけでなく、後半はいろいろなことがありました。
台風や地震もそうです。
それ以上に、私事でひどく狼狽した月日を過ごしてしまいました。
過ぎた日々は戻らないのだから、大切に日々を使わなくてはなりません。
これまで、後悔のないような生き方をしてきたつもりでした。してきたつもりになっていたと気付かされたとき、ほかにもできることがあったのではないかと、可能性に目を向けて囚われてしまいました。
現在の価値観や狭量な知識と偏見でものを見て、価値判断をして、レッテルを貼ろうとすることを、多くの人が当たり前だと思ってしています。
そんな価値基準、昨日に囚われてしまい、今の自分を見失いました。
嵐のような日々が過ぎ去った今なら、数カ月の月日は必要だったと思えます。
子供の頃、私の手足はさほど長くもなく、周囲の人たちよりも短く、できることは限られていました。そんななかで、私にしかできない道をひたすら進んできました。
無理をするための無茶をくりかえし、無茶をするために背伸びをし、一心不乱にただ一つを目指して。
一生かけても終わらないはずだったのに、まさかやり終えてしまうとは思ってもみませんでした。
物語りながら、新たな冒険の旅立ちがはじまるところなのでしょう。
私の場合、向き合うために避けられたない扉が開いたのです。
暖かなひだまりが好きな先生は、小春日和のなか、丸まりながら夢をみているかもしれません。吹きさらしの荒野をさまよう日々の先生だからこそ、ひだまりの価値をわかっておられます。先生にくらべたら、心に吹き荒れる荒野を抱え持つ私なぞ、足元にも及びません。
思い通りに行きなさい。
あなたの道を生きなさい。
決めたなら迷わず、昨日に囚われず。
哀しみを忘れず、微笑みを忘れず。
振り向かずに行きなさい。
旅立ちは別れではないのだから。
体現されている先生は、常に身をもって教えてくださっています。
やがて来るその日のために、二度とは戻らない明日を求めて迷わず進んできました。戻れない時を思い知り、生き急いだ日々を悔やんでも、明日は続くのです。
今年の夏。
失い、与え、教えられた者たちが、再びめぐり逢いました。
もうこんなにも走り続け、心も体もくたびれ疲れ果てながらもやり終えた私への褒美、と思った刹那、告げられたのです。
まだ終わっていない、と。
果てのない旅の中ですれ違い、向き合う、別れたすべての命の意味と強さと誇りを抱きしめ、また夢中で走り出せと教えられたのです。
喜びも哀しみも、痛みさえ、私には真実となりえない。
まだ行ける。
まだやれる。
まだできる。
まだ、走れ。
私の知らない昔の私が叫ぶのです。
私が私となれるその日まで。
旅は続くのです。
休ませてはくれないのです。
時節柄、お体ご自愛ください。
猫先生が、暖かなひだまりで丸まりながら夢が見られますように願っています。
敬具
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