10.

 「あなたはいつも孤独なのね。」通り過ぎていく人々の間に少女の声が響く。誰を指している訳でもない言葉が、僕の思考を波立たせる。

 

「此処は幸せに満ちている。私にはそれが何より嬉しく、また何より恐ろしいのだよ。わかるかね?君。」若者相手に語り掛ける紳士の言葉が身体中を駆け巡る。


 「どうやっても此処へ戻ってきてしまうのです。終わりにしようとする度に、終わりのない此処が恋しくてたまらなくなるのです。」いつかさよならを言った人が談笑している。


 人々は皆、穏やかで・・。静かで・・。此処には一切の争いごとは存在しない。言葉が交わされ、思考が繰り返されるだけ。性別も、年齢も、人種も、時間でさえも関係なく、ただ存在し続けている世界。

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