目立つの苦手でお人好しなモブ男が、実は魔界で一万年生き抜いた最強転生者だった件

０．転生から一万年

　山都洸太（やまとこうた）。高校生。

　享年十七歳。

　爆発事故に巻き込まれての死、であった。

　大事な人を守り切っての死、でもあった。

　そして彼は、不老不死の力を得て転生する。

　転生先は――魔界。

　人間など片手でひねり潰せるほどの化け物たちが跋扈（ばっこ）するその場所で、洸太は生きた。

　どうでもいい人間だと見下されて。

　ゴミクズのように投げ捨てられて。

　圧倒的な力でねじ伏せられ続けて。

　それでも――泥水すすって、生きた。

　何年も。何十年も。何百年も。何千年も――過酷な環境を必死に生き続けることで、彼はやがて、魔界の生き物にも引けを取らない力を身につけた。

　もはや虐げられる存在ではなくなったのだ。

　あるとき、魔界の王のひとりが言った。

『お前が望むなら、国をひとつ支配させてやってもよい。お前にはそれだけの力がある』

　だが洸太は、その申出を断った。

　自分は『主役』じゃなくていい。

　これからも永い時間を生き続けるのならば、自分は、頑張っている『誰か』を支えられる存在になりたい。

　洸太は、高校生だったときの心を、大事な人を守ったときの気持ちを決して忘れていなかったのだ。

『つまらん生き方だ。が、実にお前らしい。さっさとここを出て、好きに生きるがいい』

　王の言葉に、洸太は微笑んで応えるのだった。

　――そして。転生から、一万年後。

　魔界を抜けた山都洸太は、コウタ＝トランティアとして、異世界に降り立つ。

　第三の人生が始まった。