冒険者はうつりました( ゚Д゚)

第0話 自己紹介

 俺は冒険者である、名前は(ry

 なぜだ?何かに掻き消されるように俺の自己紹介が消えてしまった。


 俺はつい最近まで、どこにでもいる平凡な一学生だった。

 そう、学生だったんだ。


「なのに何でこんなことに…」

「おう、リク。もう動けるのか?」

「あぁ、ジェイクさん。ありがとうございます」


 ジェイクさんは俺がこちらに来てから最初にお世話になった先輩冒険者だ。


「ったく、一体どこで呪いなんて受けちまったんだよ?この辺にそんな高位な魔物なんて居なかったはずなんだが」

「あはは~、どうなんでしょうねぇ」

「まだ心臓を握られたままなのか?」

「だいぶ楽になったんですけどねぇ」


 この人のいい冒険者は、一日数Gで済むとはいえ俺の宿泊費を肩代わりして払い込んでくれている。冒険者ギルトと呼ばれるこの建物の中に併設されている冒険者向けの宿泊棟の代金だ。


「俺が感じ取れない間に一気に呪いを完成させるとか、ひょっとして南部のダンジョンから溢れて来たか?」


 町の南部には昔から存在する未だ討伐されていないダンジョンが存在する。一説には魔王と呼ばれる特異種が元気に地上で暴れまわっていた頃の名残だとか言われる。

地上とは比べ物にならないほどの魔素に溢れた空間は、地上では顕現できない高位の悪魔たちでさえ容易に降りて来れる程だと言われる。


「…まぁ、悪魔とかじゃないんですけどね」

「ん?なんか言ったか?まぁ、しっかり養生してとっとと直せよ」

「ありがとうございます」


 ぽつりとこぼす俺に反応するのは流石一級冒険者。だが、力なく笑う俺に何も言わずに立ち去ってくれる。


 そう、今俺は鑑定不能の超強力な呪いを身に宿している。

 心臓を鷲掴みにされたかの様な圧迫感と、常時発生する倦怠感。判断能力も一段下がる。あとはまぁ、常時混乱状態といったところだ。

 町の教会においても匙を投げられ、危うく町追放に成りかけたのではあるが、先ほどのジェイクさんの口利きによって何とか町に縋り付いているのが実情だ。


 だが、教会の神父でも知識にないこの症状について、俺はこの世界のだれよりも知っている。


「あぁ…、鬱だ」

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