私の人生でへえーと思った話

バーバラ・C

第1話 世界一キレイなちんち○

 そのことに気が付いたのは、清掃のパートを始めて半年くらい経ってトイレ掃除にも慣れてきた頃でした。


 トイレ掃除の時には入口に立入禁止と書かれた『清掃中』の黄色い看板を置くのですが、12階建てビルには結構な数の会社が入っており、トイレの使用頻度も高く、ほぼ『清掃中』の看板は意味を成していませんでした。


 私が男性用トイレを清掃していても、遠慮無しに私の隣にきて、用を足していく人もいました。


 まあ、その時は清掃員なんて底辺の仕事する私には人権もないのかと思ったものです。後々、この気持ちは私に火を点け行動を起こすのですが、その話は別の機会に。


 私の担当は5階から8階までで、毎日平日8時~12時までの間に掃除機かけ、エレベーターと非常階段のモップかけ、壁の雑巾がけ、トイレ掃除、ゴミ捨て、等でした。


 慣れてくると清掃順も自分の都合が良いように決まってきて、まず5階、次8階、次6階みたいに各会社の会議中にトイレ掃除ができるように段取りもできるようになります。


 楽な仕事だなぁ、運動にもなるし、と余裕が出てきた頃、毎日、同じ時間帯に手を洗う男性がいることに気が付いたのです。


 私が6階の女性トイレの清掃が終わり男性トイレに取りかかる頃、すでに手を洗っている時もありました。


 何故、その男性が手を洗うだけなのに気になるのかというと、その男性は手を5~6分洗い続けるのです。


 普通に洗う人でも20秒くらいで長いと感じます。仕事中だと5秒、あるいは水で手を濡らすだけの人も結構います。人は濡れた手をハンカチで拭けば気がすんだりするものです。


 その男性は、石鹸水をつけてしっかりと泡立て5分程度擦り洗いをし、水で石鹸のぬめりが無くなるまで流します。


 よっぽど仕事で手が汚れる作業が毎日あるのかなとか、ペンのインクが取れないのかな、神経質な人もいるもんだ、くらいに思っていただけでした。


 しかし、ある日、気が付いてしまいました。

 そりゃあ毎日出会う訳ですからね。


 彼は、手を洗った後に小用を足しているのです。

 そして、用を足した後は、手は洗わずトイレから出ていくのです。


 あれ?

 私はしばらく考えました。


 なるほど!


 彼の息子さんは、とても清潔な手でないと触ってはいけないくらいキレイだということなのです。

 そして、そのキレイなものを触った後は、手は洗う必要はないということですね。


 私は、この時、世界一キレイなちんち○を持った男に出会ってしまった、と思いました。


 彼の手は、トイレに行く前のみ念入りに洗われるのでしょう。

 この世の他のものは、すべてそれより汚れているということで、きっと用を足した後は手を洗う必要はないのですね。



 

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