シュヴァリエ―アニーの理由―

渡馬桜丸

登場人物・舞台設定・梗概

【登場人物】

アンナ・ファンシャー…愛称はアニー。楽園出身の若い研究者。メンテナンス技術やほかの者のサポートに関しては、楽園でも指折り。十代で楽園入りしたため、世情にやや疎い。能天気だが悪知恵の働く内弁慶。こじらせ気質。


リオン・ビューモント…通称〈シュヴァリエ〉。優れた剣技を持ち、ルーン=バロットが最後にいた店で用心棒をしていた。支配人の意向からドレス姿で剣を振るっていたため、細面な外見と相まって女性と誤解されていることが多い。


チャールズ・ルートヴィヒ…楽園の最高責任者。アニーの伯父。


【舞台設定】

『マルドゥック・フラグメンツ』収録作品「マルドゥック・アノニマス “ウォーバード”」から数日が経過したマルドゥック市。アニーの回想で、ヴェロシティ序盤やスクランブル渦中での楽園にも時系列を移す。


【梗概】

マルドゥック市に訪れたアニーは、事件屋としての相棒を探すべく、マーシャル探偵事務所を頼った。そして、そこで薦められた〈シュヴァリエ〉と呼ばれる麗人とのコンタクトを所長に依頼する。


三年近く前の楽園在籍時代。アニーは最高責任者たる伯父のチャールズに、施設から出る承諾を願い出ていた。チャールズは渋るが、禁じられた技術が浸透し蠱毒化していくマルドゥック市に自分が赴くならば、ここにはない新たな技術を還元できると説得。許可を得ることに成功する。

彼女が社会から隔離された楽園を出たがる理由は、楽園への来訪者同士の会話を人づてに聞いたためだった。ルーン=バロットからウフコックへ送られた、「愛してる」という言葉。

アニーの決意。私だって恋がしたい。愛してるとか言ってみたいし、言われてみたい。

純情にして邪な動機を胸に、きわめて膨大な審査と手続きを数年がかりで乗り越え、彼女は楽園の外に出たのだった。


探偵所長からの連絡を受け、アニーは〈シュヴァリエ〉と出逢う。所長からは女性と聞かされていたその人物が、運命の相手であることなど知らずに。

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