聞こえてきた話
魚が食いたくなって飲食店に入ったのだが、通された席の右にも左にも他の客が居て、否応なしに話し声が聞こえてくるのであった。
右側の客は子供が数人と母親、おばあさんであった。いや、聞いたわけではない。あくまで予想である。母親がやたらと子供を叱っており、子供の騒ぐ声よりうるさいぐらいであった。
左側の客は二十代の男二人で、金が無いのか、センスが無いのか、はたまた興味が無いのか、貧相な服装をしていた。以下はその二人の会話である。
「睡眠時間を減らそうと思ってるんだよ」
「なんで?」
背の高い男が口を開き、髭の男が応える。
「寝てる時間って意識が無いわけで、その時間は何もしてない、イコール生きていないってことになるじゃない」
成程。私も全く同じことを考えたことが有った。
「でも、寝ないと疲れ取れないよ?」
「ゼロにするとは言ってない。無駄に寝てる時間を失くそうってこと。五時間寝たら、もう充分と思うんだよ。逆に十二時間とか寝ると、起きるのしんどいじゃん」
「ああ、確かに」
まるで自分の生き写しを見ている、聞いている様であった。
思わず横目で顔を確認したが、まあ、似ても似つかない。一先ずは安心した。
「でも俺は寝てる時間が好きだからなー」
髭の男がそう締めくくると、背の高い男はそれっきり話をしなくなった。私も食事が運ばれてきたので、そっちに没頭することにした。
しばらくして、男二人が席を立ったが、その間、会話をしていたかは覚えていない。子供たちはまだ暴れていた。
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