飯屋にて

 十一時ぐらいに朝食と昼食を兼ねて飯屋へ行った。暖簾を潜り、席へ案内された時に、既に嫌な予感はしていた。混んでもいないのに、人の多いところに通されてウンザリしていたが、そんなことは些細なことであった。席に着いた瞬間に、そいつは私を襲ったのだ。

 臭い。例えるなら、十年ほど使われていない押入れの匂いだ。煙草や香水の方がまだマシである。しかも、その臭いの主はまだ食事を始めたばかりで、食事中ずっと隣にいるであろうことは容易に予想が出来た。最初に違和感を覚えた時点で帰っておけば良かったのだ。案内された以上、何も食わずに帰っては格好が悪いとか、そんなことはお構いなしに、さっさと出て行けばこんな悲劇は起こらなかった。

 結局、私はなるべく早く来そうなものを注文し、押入れに閉じ込められたような気分で食事をとった。味なんか分かるはずもなく。

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