第65話

ふと思うのだ。

何故前任者は帝国を放棄し、泥酔して訪れたミケの部屋で、鏡に映った俺と入れ替わったのか・・・

ミケはすぐ受け入れてくれ、俺の持っていた常識の中で理解が出来るようにゆっくりと慣らしてくれた。女体の喜ばせ方や魔法の使い方も教えてくれた。

彼女いない歴の更新は終了し、引きこもり時代のゲーム知識やイベント企画のノウハウがものすごく役に立つことも知った。

今まで何人王がいたのかは知らないが、タマを引き合わせてくれたのは初めてであろう。

ミケやタマと対等に向き合えたからこそエルベレスを囲うことが出来たし皇女を従わせることもできた。

そうでなければエリカやメルミアはもちろん竜娘やラミアにさえ会う事はなかったであろう。

そして親衛師団の娘たちが生まれることもなかったであろう。

もしかして、この世界は夢で出来ているのではないだろうか。

夢から醒めたら、また家には寝に帰るだけの、心の通った女性のいない生活が待っていたらいやだな・・・


ザクザクザク

離れた場所で音がする、


目が覚めたら世界は消えてなんかいなかった。

気弱な夢を見たものだ。忘れよう。

潮の香りが強いという事は風が山風から海風に変わっている。

そして何時間も経過しただろうに、頭はしっかりとミケの太腿の上にある。

「ミケ」

「はい」

「ありがとう」

身体を起こすと、ミケが何かを口に入れてきた。

うん、この噛んだ感じは調理前のウインナーだ。

元の世界では独り暮らしで、とにかく少しでも長く寝たかったのでコンビニで買った袋入りウインナーを冷蔵庫に入れて置き、それをそのまま齧っていた。

ウインナーとヨーグルトが基本の食事だった。

「魔獣の肉を挽いて腸に詰めたものを茹でて干したものです」

ビンゴ

まあ、どんな物であろうがミケが手ずから食べさせてくれたものを食べないなどという選択肢はない。

「お前は食べたのか?」

ミケはにこにこしている。「ご存知でしょう」と言いたいのだろう。

もちろんミケに食事が必須でないことなど知っている。

聞かずにはいられなかっただけだ。

「先程から向こうで地面を掘り返しています。行ってみませんか」

音のしていた方に行くと、竜娘3人とギルリルが作業中だった。

砂盤さばんか」

竜娘たちは映電が上空から見た景色を地面に再現し、偵察の様子を見るのが退屈になって戻って来たギルリルがいろいろと飾り付けを施しているといった感じだ。

「報告します」

先程放った第3小隊のうち1人が戻っていた。

片手には棒を持って報告する気満々だ。

「うん」

「現在地はここ、沖合の帆船は概ねこの辺りです」

「うん」

「現在地から入り江の先、この位置までは建物は存在せず、ここと、ここに天幕が、ここに歩哨がいて道路上を警戒しています」

「うん」

「帆船から小舟によって揚陸ようりくされた荷物はこの位置で露天積みされ、馬車が到着次第積載しています」

「うん」

「馬車はこの道路上を移動しており、どこまで輸送しているのかは解明できていません」

「うん」

「沖にいた帆船が抜錨ばつびょう後、小舟はまだこの位置に漂っていることから、別の船がやって来て、夜間も作業を続行すると思われます」

「うん」

「湾の細部活動の監視と荷物の輸送経路及び目的地の解明のため、2日ほど時間をいただけませんでしょうか」

「わかった、許可しよう、ただし」

「はい」

「無理に解明しようとして戦闘に陥らないこと、危ないと思ったら躊躇なく逃げること」

「はい」

「食料は?」

「十分な木の実と水源を確認しております」

「ミケは小隊へ支援できるか?」

「全員に目をつけていますので状況は分かります。普通に話してもらえれば聞こえますので」

「ということだ。何か支援が必要になった際にはミケを頼れ」

「わかりました」

「では、明後日、後宮の大ハマグリの部屋で報告を待つ、移動はミケに頼め」

別にミケを通しての報告でも構わないのだが、命じた本人に報告させて彼女らの評価を高めてやるのも皇帝の仕事のうちだろう。

 現在までに判明したのは沖合の帆船が誰かを兵站支援しているという事だ。

2日あれば誰かまで特定できなくても、支援をしている地域は解明できるだろう。

地域が解明できればやり方はいくらでもある。

「ミケ、俺とギルリル、そして竜娘らを後宮の大ハマグリの部屋前に戻してくれ」

「はい」

浜辺の景色は薄暗い後宮内の景色に一変した。

ミケがすぐに間接照明のような柔らかな灯りで周囲を照らした。

「ギルリル、映電と一緒に大ハマグリの所へ行って今日見た地形情報を伝え、明後日までに模型を作るよう言ってくれ」

「はいです」

「ファイアフライ、アンビ、また遊ぼうな」

「はい、いつでも」

ファイアフライは嬉しそうに言った。

「じゃあミケ、エルベレスの部屋に行こう」

「はい」

「集められる範囲でいいので、俺の女たちを夕食後部屋に集合させてくれ」

「わかりました」


夕食後集まった女たちはソファや床の上等、思い思いの場所に座った。

 同じソファの右側に座ったミケは言うまでもなく皇后で女達の頂点に立つ。

見た目は黒髪ロングの美少女であるが、凄まじい魔力を操る女神である。

可愛い嫉妬はするが、基本他の女と子供をたくさん作れというスタンスである。

 左側に座ったタマはミケと双子の魔王であり、乱交が好きな遊び人でもある。

姿は自由自在に変えられるが、特に必要のない時にはミケと同じ姿をしている。

 正面のソファはエルフ王のエルベレスであり、既に男児を出産している。

金髪碧眼で、他のエルフ達よりも胸が大きいのが特徴である。

エルベレスも基本複数プレイが好きで、俺を独占しようとはしない。

 斜め右のソファにいるメルミアは女児を出産しており、体の相性が一番合う女である。耳の長いハイエルフにクラスチェンジさせ、遊撃隊を任せている。

メルミアは俺が奴隷市で高額で買い取って救命したことと辺境伯を討たせたことに恩義を感じている。

 メルミアの右隣、床にちょこんと座るエリカは母のメルミアと同時期に女子を出産したが、未だに母と同時に抱かれることを恥ずかしがっている。

 その右にいるギルリルはまだ幼く、俺の女というわけではないが、重要な場面には常に帯同しようと決めている。

 斜め左のソファにいるゾフィーは巨乳を楽しませてくれる妾で、部屋に来るなり懐妊したと嬉しそうに報告してくれた。

 その左にはエルベレスの侍女たちが床に座っている。

夜の行為を見守った後の宿直明けに、朝に弱いエルベレスに代わって俺の性処理に来たりする。子供を宿せたらラッキー、という感じだ。

 その子らの後方でラミアが落ち着かないらしく身体をうねうねさせている。

ラミアに言わせればタマの女なのだろうが、必要なので来てもらった。

まあまあ、とラミアを落ち着かせようとしているのはジュリエットだ。

 大ハマグリはその後方で早く製作に戻りたいんですけどーオーラを放っている。

こいつは基本的に裸族らしく、裸で出歩こうとする癖があるので、自分の部屋から出る時には他の女への礼儀として最低限下着はつけるよう命じている。

今日は製作中に呼び出されたという状況で下着をつけて来たから良しとしよう。

 大ハマグリの横で私忙しいんですけどオーラを放っているのが第1皇女である。

皇女が来ることは想定していなかったのだが、呼ばれた親衛師団長が近くにいた皇女の首根っこをつかむ様に連れて来て、扉の前に立ち塞がっているので逃げるに逃げられないといった感じだ。

「みんなに聞いてもらいたいことがある」

部屋のざわめきは俺が言葉を発した瞬間、静まり返った。

「この帝国の正式名称は優一神聖帝国となった。神聖とは女神であるミケ、魔王であるタマ、エルフ王であり精霊王であるエルベレス、沿岸部で古来より信仰の対象となっているラミアを含めた概念である」

皇女はふんふんといった感じで頷いているが、ラミアは「えっ?」という驚いた顔をしている。

ラミアを無断で神聖に混ぜ込んだが、皇女ならしれっと書き換えるだろう。

「そこでだ、帝国では週の初めを聖なる日とし、神聖に祈りを捧げる日としたい」





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