第1話:噂話
「うーん…」
あたしは気がつくとうつ伏せ状態になった体を起こして座る。
辺りを見回すと学校…なのだろうか?階段の近くに所々赤い液体が飛び散っている。壁も、手すりも…
背後には鏡が掛けられておりあたし自身が写っていた。
あたしさっきまで何をしていたんだっけ?
落ち着け落ち着け…しっかり思い出すんだ。ここは学校なのか、あたしは何故倒れていたのか…
–––30分前 2–B教室–––
「はぁ…」
あたし千歳夕茉(ちとせ ゆま)は頬杖をし、ため息をついた。帰宅部のあたしは特にすることもなくとにかく暇で仕方なかった。
部活の種類は恐ろしいぐらいに少なく入りたかった音楽関係の部活はなくあたしは部活に入らなかった。
「美野里ちゃん演劇部の練習があるし、夜兎くんは用事で帰っちゃうし…」
おまけに他の友達にも遊べないとか言うし…
もうこうなったら最近友達になった公立高校に通ってる後輩の男の子と遊ぼう、うんそうしよう。
あたしはポケットの中からスマホを取り出しメールを送ろうとした時
教卓側にいる2人の女子の声が聞こえた。
「ねえ、こんな噂話知ってる?」
「噂話?」
「そうなんだけど『血鏡様』って聞いたことない?」
血鏡様?
あたしは興味津々になり2人の会話を聞く。
「何それ?聞いたことない。」
「知らないの?水瀬学園に纏わる都市伝説だよ!ここの2階の踊り場に鏡があるじゃない?雨の日に午後4時44分に鏡の前に立って呪文を3回唱えると願いを叶えてくれると同時に幸福な世界に連れて行ってくれるらしいよ!」
知らなかった…
「幸福な世界?」
「ちょうど雨降ってるし今がチャンスなんじゃない⁉︎」
幸福な世界って異世界ファンタジーじゃあるまいし…これ後輩くんに聞いたら絶対信じないだろうな…
「…で?その呪文って何なの?」
「よくぞ聞いてくれました‼︎その呪文はね、『血鏡様、血鏡様、もしいらっしゃいましたら出てきてください』って言うの。すると血鏡様が現れるんだって。」
「また単純な呪文だこと…」
「でも願いを叶えてくれる前に条件を差し出してくるんだよ」
「条件?」
ショートボブの女の子が首を傾げる。
すると髪の長い女の子が怖い顔でこう言った。
「それはね…『人間の血液』だそうよ」
……え?
人間の…血液…?
背すじがぞくりと感じた。
「血液…?」
女の子は青ざめて後ずさりをする。
そりゃそうだ、誰だってあんな条件を聞いて青ざめない人間はいないのだから。
「まぁ、先輩から聞いた話なんだけどね。本当かどうかわからないわよ」
「もうこの話やめて帰ろう…」
「紗夜が言うなら帰ろうか」
2人は帰る準備をして教室から出て行き、教室はとうとうあたしだけになってしまった。
時間を見ると4時38分に過ぎていた。
もう一度スマホを起動して途中で書き溜まったメール文を消しスマホをポケットの中にしまった。
「遊ぶのはまた今度にしよう」
あたしはリュックを背負って教室を後にした。
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