第6話 伊遠&茉莉side
―郊外・某所。
「マス~タ~。私、ブラッディマリー追加よろしく~」
「僕、黒ビールジョッキ一杯とおつまみにフライドオニオン追加ね~」
伊遠の元に茉莉からのメールが届いて二日後。伊遠は茉莉と例の連続殺人事件について何度かメールのやり取りをし、最終的にいつもの店で話そうと言う事になり店の前で落ち合わせた後、何故だか二人してカウンター席で盛大に酔っぱらっていた。
「まったく~…。こう言う陰気臭い時は勢い良く羽目外して、盛大に飲まなきゃやってらんねぇよ!
あいつら組織内に異能力に詳しい研究者が少ないからって口実に、次から次へとつまんない雑用押し付けやがって~!
僕はなんでもかんでも出来るほど万能じゃないし、二十四時間営業の便利屋でもないんだぞ~」
「酷いわ酷いわ酷いわ! あの顔と外面と口先だけのクサレキモメン共は分かってない~!
私は強くて逞(たくま)しくて良い男をお持ち帰りしたいだけなの~!」
最早全身に酒が回りまくっているのか、伊遠も茉莉も言ってる事が完全に支離滅裂である。そんな見た目十代実年齢完全詐称の酔っぱらい二人組を、マスターは洗ったグラスを拭きながら呆れた表情で見ている。
「…あんたら飲みっぷりに勢いあるのは良いが、明日も仕事じゃないのかい?」
「しょうがないらろ~…。向こうひゃゆっくり美味い酒なんて飲へないからなぁ~」
大分酔っているのか、見事なまで言葉に呂律が回っている伊遠。追加で頼んだジョッキ黒ビールの他にも、度数の強いウォッカのボトルを一本余裕で開けている。
「そもそもあんた達がここに来たのって、『連続殺人事件と異能力者狩り』の話し合いしようと魂胆じゃなかったのかよ」
「いやだマスターったら~。わたしらを排除しようと企む悪党共をお仕置きするから、これから伊遠ちゃんと作戦会議するんじゃな~い」
酔ってはいるが、店に来た目的自体はきちんと覚えていたようだ。しかし一時間も経たずに酒を飲み過ぎているせいか、両者共に相当はっちゃけ過ぎてはいる。これではまともな話し合いにならないだろう。
「そもそも、異能力者だけを狩るって発想自体が僕達理解できないんだよ! 異能力者も人間も元からして変わらないだろうが~」
「そうよそうよ~! 迷惑かけてるのは人間だって異能力者だって、ちっとも変わらないじゃな~い」
酒に酔いながらも異能力者狩りへの憤りを吐く伊遠に茉莉も同意し、マスターも苦笑いしながらうんうんと頷く。
「あんたらも十分迷惑かけてるよ…」
「酷いなマスタはぁ~。僕達は迷惑料含めてここの店の代金は、毎回きちんと払ってるよ~」
「人間でも異能力者でもきちんとお金払ってくれるなら、どんなお客様でも受け入れてくれるマスターも十分良い男よ~」
…最早、殺人や狩りと言った物騒な事件の話からは、完全に話題が逸れているのではないのだろうか。酒を飲みながらますますテンションの上がる二人を見て、マスターは内心で深いため息をついた。
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