網戸

さっきまで蒸し暑かったけど

日も落ちて涼しい風が吹く

近所の人が蚊取り線香焚いてる

いい匂いがする鈴虫が鳴く


処暑の夜に窓のそばで

湿った空気を浴びながら

運ばれるたくさんの感覚

神経を通して伝わる感情


眠れなくても悪くないよ

文明の発展は眩しい

電気をつけて明るい気持ち

蛾とかタマムシとか寄ってくる


昼夜逆転は体を蝕む

同時に心も壊れてなくなる

でも大丈夫薬を飲めば

みんなと同じ生活ができる


なんともないバイト先の人が

毎日睡眠薬を飲んでいた

なんともない普通の友達の

腕にたくさんの傷があった


繕って生きている人達は

案外社会に紛れ込んでいて

必死に隠し通して最後に

神様にはやっぱりバレるらしい


嘘をついてでも守りたかった

プライドはそんなに価値あるものか

ダサくてもさらけ出せる世界なら

自分に正直に生きられたなら


家々の隙間を縫う秋の声

甲高く狂う人々の声

優しく囁く生き物たちは

誰よりも幸せそうだった

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