銀景色

深夜 酔人

今昔公園

 石油ストーブの燃料がなくなった頃、ふと私は外に出たいと願った。冬休みの間延々と家に篭もり受験勉強に追われながら過ごしていたので、少し休憩したかったのかもしれない。そうと決まれば、と私はストーブを消火してコートに袖を通した。


 家を出て、鍵を閉める。キチリ、と硬質な音が鳴る。私は家の裏手に進んで"秘密の階段"を前に立ち止まった。小学生低学年くらいの時に公園に行く時によく使っていた、瓦礫でできた階段。今は草木と蜘蛛の巣が蔓延りとても登れたもんじゃない。いや、頑張ればいけなくもないが滑り落ちるのが怖い、というより危険だ。そう結論づけて、私は引き返して別の道から公園に行くことにした。小さくため息が零れた。


 公園に行くまでの坂は、なかなかに急で足腰に結構くるものがあった。すぐ横を幼稚園児くらいの子が元気よく走っている。彼はこの硬いコンクリの坂をどのように感じているのだろう。想像もつかないしあまり想像もしたくない。


 公園について、まず最初に驚いたのは芝がなくなっていた事だった。ひょうひょうと吹く寒風は荒廃した土地を撫でるように流れて行った。私はその様を呆然と見つめていた。かつて遊んでいた遊具は錆びれて立ち入り禁止のロープが張り巡らされている。私は口を開いて、またすぐ閉じ、来た道を引き返し始めた。響くは風邪と枯れ木のぶつかる音だけ。私は少しだけ歩くスピードを速めた。


 お互いに成長したなど草も生えぬわ。

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