40-6 輝く銀星! ゼルガ、今舞い戻る!!
『一難去ってまた一難、のっけからバグロイドが待ち構えていたとは』
『……ミタコトナイ』
『あれは……超常軍団の奴か!』
電次元ジャンプ直後のドラグーンを目掛けバグロイドは襲い掛かった。パルルが触れる通り見慣れない紫の機体だが、メガージが言うにはバグエスパー――超常軍団の主力でもあった。左右に鎌のように伸びた半月状の翼があり、右手には螺旋が刻み込まれた鋭利な槍を手にしており、
「そ、そういえば……確か超常将軍はまだ生きてて、戦力も」
「才人さん、ここで怯えたらだめですよ!」
『サイト、オビエルナ、オクビョウカゼ、コワイ』
「玲也ちゃんやシャルちゃんの分まで背負っての一番手だ!」
玲也の負担を抑えるだけでなく、ウィンの状況からシャルもすぐに出られそうにない。二人の分を背負い、コンパチまで不在といわばプレッシャーとハンデを背負いながらも才人は出た。一番手としての果たすべき使命は重大と捉え、思わず声に出して叫ぶと共に、
「先鋒は相手の様子を見るだけじゃなく!」
『勝てると見込んだ瞬間を逃すな! 後につなげるためにもだ!!』
ディエスト共々、先鋒としての戦いに挑む。それは相手全体の出方を探るだけでなく、この一戦で勝利を収めて電装マシン戦隊に弾みをつける事と二人とも捉えていた。かくして2機はハリケーン・ウェーブとEキャノンを同時に繰り出したものの――高速で飛び交うバグエスパーからはエネルギーフィールドに展開されて遮り、
「マジかよ!クロストみたいなバリアーをその……みんな!?」
『……ドラグーンに近づけるな! いざという時は捨て石になるぞ!!』
「す、捨て石……!?」
『ハヲクイシバレ、マケイヌニ、ナルナ!』
「捨て石とか、負け犬とか無茶苦茶言うけど!」
4機のバグエスパーはエネルギーフィールドを展開させた上で、特攻同然の突撃を畳みかけていった。ドラグーンに直撃すれば甚大な被害をもたらすであろう――カプリアが咄嗟に判断を下し、スフィンスト共に一番手、先方ではなく、囮、それも万が一を想定するなら自分たちを捨て石のように犠牲にする必要もあると見なしていた。才人が多少怯えの色を見せるものの、
「俺がここでくたばったら、玲也ちゃんにあの世まで恨まれちまう!」
『……囮として無駄な消耗は避けろ! 起死回生の一手に踏みでる為にだ!!』
「玲也ちゃん……任しとけ!!」
玲也は才人の役回りを自分が変わろうとも言いださず、助太刀に出るともあえて言わない。あくまで才人に対して助言を交わすのみにとどめた。それも捨て石同然ではなく、バグエスパーにスフィンストが勝つと信じた上での激励でもある。好敵手が信頼を寄せた上での助言を受けると共に弱気を吹っ切り、
「ソードガンでも足止めになります! いざという時はキャタピラーをパージすれば!」
『そうですよ! スフィンスト・ストライカーでしたら、スフィンストでも飛びまわって逃げる事は出来ます。ダブルゴーストでしたら十分相手が務まりますが……』
「ダブルゴーストでは流石に無理と思いますよー」
今のスフィンストはトライ・クローターを両肩に装着したスフィンスト・ストライク。所謂クロストとのコンバージョンによるものである。それもありクロストのコクピットで待機するアズマリアとルミカは一応助言をしていた。まるで自分たちならバグスエスパーを問題なく倒せると特にルミカが豪語していたが、
「ったく、簡単に言えるほど簡単じゃないのにさぁ!」
『なら、そのまま勝ちにいくぞ!!』
「あ‼ カプリアさん、まさか……!!」
『これも一つの攻め方だ、捨て鉢ではないぞ……!!』
才人として、思わず苦言も呈したくなる。実際にエネルギーフィールドで身を覆われたバグスピナーに対し、勝ちを掴む事も容易ではないのだから。同じ前線に身を置いているカプリアはあえてバグスピナーにその身を乗り込ませる。右手のグレープ・クローを回転させながら強引にエネルギーフィールドへと押し付け、さらにホースシェル・シーカーの先端から、ザンバローグを展開して串刺しにしてみせており、
『そうです、ビームと質量の同時攻撃には耐えられません! 才人さん!!』
「だったらここで、クラッシャーを……いや!」
エネルギーフィールドを破る上では、一点に集中して質量による攻撃を浴びせる必要がある。イチがカプリアの行動からその結論にたどり着いたとなれば、咄嗟に全体重を左肩に寄せてのショルダータックルを仕掛ける――プロペラとなるトライ・クローターを簡易的なドリルとして、フィールドへ全質量をもって抉らんとしており、
「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ショルダータックルから姿勢を変えるように、スフィンストは左手をバグエスパー目掛けて突き出す。フレイム・バズソーを楯代わりとしてフィールドの熱量からマニュピレーター守り抜くとともに、ハリケーン・ウェーブを至近距離でさく裂させていった。エネルギーと質量の同時攻撃に伴い、フィールドのエネルギーが打ち消され、
「この時を待ってたんだよ! レールガンでなぁ!!」
そして、フィールドが喪失してバグエスパーに虚が生じた時、スフィンストのレールガンは見事直撃した――勝利を確信した才人だがフィールドへとプロペラでもあるトライ・クローターを押し付けた代償として、大気圏内での飛行能力が失墜しており、
『おっと、まだ気を抜いてはいけないぞ』
『……ユダン、タイテキ、ダメ、ゼッタイ!』
「お、仰る通りで……ちょっとだけ借りますけど」
『なら、少しの間頼むぞ、器用に飛べないからな』
ただ、ディエストが咄嗟にホースシェル・シーカーを託し、スフィンストのバックパックに連結されるとともに危機は脱した。最もカプリアが触れる通り今度は自分たちの飛行手段が奪われるとのリスクがある。ストリボー・ブレークを海原に向けて展開する事により、どうにか対空していた所、
「カプリアさんの分まで戦わねぇと……俺が囮によ!」
「ま、待ってください! 熱源反応が先ほどのより……」
「それだったらこいつで……うあっ!!」
今度は自分一人で残り2機を相手にする必要があった。フィールドを展開しながら迫りくるバグエスパーだが――バックパックに設けられたフライトユニットを質量弾として打ち出していたのだ。アイアン・エッジの二刀流でフライトユニットを切り捨てれば、
「やべぇ!電次元ジャンプでもしないと間に合わなねぇ!」
『待て! ここで使えばこの先が持たないぞ!!』
だが先ほどの攻撃はスフィンストをおびき寄せる囮にすぎなかった。別方面からバグエスパー2機がドラグーンへと特攻同然の行動に出ていた。電次元ジャンプでなければ、バグエスパーを食い止めるだけの間合いを詰めることが出来ない。けれども、カプリアがハードウェーザーのエネルギーが尽きる懸念から、才人に制止するよう促すと、
『ダイジョウブ、カプリア、マッテ……』
パルルだけは、この状況を時が直ぐに打破する事が出来ると先を見据えていた――実際オールの左舷エンジンを守る様にして、白銀色のハードウェーザーが現れた。さらにわが身を盾にしてバグエスパー1機の直撃を受け止め道連れに持ち込んでいく。ハードウェーザーにしては呆気ない幕切れだが、
『まるで影武者のように呆気ないとなれば……』
『ゼット・ミラージュだ! 自分の影分身を作り出せるとなれば……!!』
『……その通りだよ』
その姿は電装マシン戦隊からすれば見覚えがあるものであり、実際カプリアと玲也はそのハードウェーザーが、そのプレイヤーが何もかすぐさま気づいた。特に玲也の胸の内は高まる想いで募るばかりであり、その直後に遠方からの衝撃波がもう1機のバグエスパーをフィールドごと粉砕する姿から確信へと至り、
『申し訳ありません、もう少し早く合流したかったのですが……』
『ドラグーンを、電装マシン戦隊を救う事が出来たら光栄だよ……』
『……ゼルガ様、ユカ様、やはりご無事でしたか!!』
普段から渋くもあり、厳つくもあったメガージの表情から安堵の色が浮かび上がる。それは自分が今主君として相応しいと忠誠を寄せる人物であり、白銀のハードウェーザー・リキャストは、電次元の希望、バグロイヤーからゲノムを解放するための象徴でもあるのだから。
『すまないゼルガ君、電次元で早々君に助けられるとは』
「これからの皆の者がそうあってほしいとなれば、助ける理由はないですよ。それに……」
エスニックが電装マシン戦隊を代表して、ゼルガへと礼を述べ彼もまた当然のことであるとの姿勢である。地球とゲノム、次元を超えた人々が本当の相互理解による共存共栄を果たす足掛かりであると、ゼルガがこの戦いを捉えていた事もあるが、
「玲也、君とこう手を取り合って戦う日が来ることを待ち望んでいたのだよ……」
『……俺もです。生涯の好敵手として力を合わせましょう!』
「その通りだよ……,私も、君も、志を共にする皆が勝つのだよ!!」
ゼルガ個人として、玲也との再会を経ての共闘の場を待ち望んでいた。生涯の好敵手と唯一認めた彼がいるならば、この戦いの勝利は現実味を帯びてくる。双方が手を取り合う未来を望む者としてゼルガも玲也も同じ考えであった。
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次回予告
「ゲノムでの戦いが始まった。俺とゼルガはバグマスターを相手に回して戦っているが、カプリアさんもマーベルさんもまた同じだった。超常軍団との戦いに挑む電装マシン戦隊だが、鋼鉄将軍ハインツがドラグーンへと迫った! 迎え撃つのはイーテスト……やめてくれ、アンドリューさん、リタさん!次回、ハードウェーザー「鋼鉄将軍の最期! 電次元に散るイーテスト!!」にネクスト・マトリクサー・ゴー!」
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