第41話「鋼鉄将軍の最期!イーテスト電次元に散る!!」
41-1 娘よ!鋼鉄将軍は修羅となりて
「効果は十分だな。その調子でつられてくれたらな」
『おびき寄せればいいって……いや、玲也ちゃんに無理させてる気がするけど』
トレントス地方、首都スカルプの喉元に位置するケーチェイス。ネクストはブレイザー・ウェーブを発振させる事で、逆に自分の存在をバグロイドへと示さんと狙っていた。彼が一番危険な役周りではないかと才人が危惧していたものの、
「気にするな、お前があの時代わりに戦ってくれたからな」
「けど、ゼルガに助けられてたパチ」
『そうそう……ってそこでオチつけるなよ~』
スフィンストとディエストの戦いは、最初の決戦を制したものとして、電装マシン戦隊の士気を高揚させた――玲也そのように評して彼らの敢闘精神を無駄にはしないとアピールしていたものの、そんな玲也の隣でかつての相棒が彼へダメ出しもかます。そこでずっこけて突っ込みを入れていたが、
「カプリアさんもいても危なかったらな。十分役目は果たした筈だ」
『ほ、ほら玲也さんがそういってくれてますから、そこまで気を落とさず』
「確かにオレ抜きなら、70点ぐらいは挙げてもいいパチかね」
『な、70%って、何か微妙に評価低いような』
玲也とイチが揃って彼の健闘を称えつつ、フォローを加えていたものの、彼の評価は少々手厳しい。ここで出鼻を挫かれると才人のメンタルにも支障をきたすかもしれなかったが、
『けどまぁ、オレがいなくてもここまで戦えたら十分パチよ』
「コンパチ~そうだよな、そういってくれないと俺も調子狂っちゃうし!」
『すぐ調子に乗るパチ、この先オレがいなくても戦ってくれないと困るパチよ!』
『こ、この先いなくなりますってコンパチさん、何かまるで』
最も自分が不在ながらも、奮戦し続ける才人の腕はある程度は評価もしていた。自分が不在だろうとプレイヤーとして務まる腕があれば不足はないとも言いたげだが、言い回しがどこか不吉であると思わずイチが不安を露わにしていた所
「何を言ってるパチ! 俺がくたばるわけないパチよ!!」
「イチ!? コンパチちゃんもだけど、誰にもしもとかここでいうのは」
「リンの言う通りパチ! オレはあくまでオマエ達の補助輪なだけパチ!!」
『ごめんなさい! そんな事ある訳ないですよね!!』
イチが懸念していた意味を察し、リン共々不吉な事をこの場で口にする事は避けるべきだと叱る。彼もすぐさま自分の失言を詫びた後、
「……」
「玲也がボーっとしてどうするパチ! 今のオレはオマエの……」
「す、済まない。少し考え事をしていてだな」
「しっかりするパチ、今はオマエの補助輪だパチ」
ふとイチの言葉が脳裏に引っかかったのか、脳波に微かな乱れが生じているとコンパチから指摘を受ける。彼が玲也のサポートに回っている事も、マルチブル・コントロールの制御をサポートするため、その為にコンパチが改造された経緯もあり、
「そうだな……流石に前に出てこなければ」
『前に出なければって、もしかしてリ……』
「ほら才人さんも、イチも! 後はお姉ちゃんが後は頑張るから!!」
『そ、そうですね……姉さんの手を煩わせる事は、少し気が引けますが頼みます!!』
玲也として、コンパチ以上に不吉な予感がしてならない相手が明らかに一人いた――才人も誰の事か確信しようとしていた途端、リンが少し大げさに自分たちに任せるべきとアピールしながら、一方的に通信を切った。
『玲也様たちが囮を務めていますが……』
『それでも、こう平然としてられるとは流石だよ』
「……それは貴方が傍にいるお陰です」
『玲也がそこまで私に期待しているとなれば、それらしくなければな』
ネクストだけでなくリキャストも――ゼルガ達もまた同じ囮としての役割を果たしていた。被弾が命とりとなるビーグル形態でバグエスパーをおびき寄せている様子に称賛を送りつつ、ゼルガもまたバグエスパーを圧倒し続けていた。実際、相手がエネルギーフィールドで全身を覆おうとも、両腕のブリギット・スリラーと胸部のカリドス・バーンによる急激な温度差を利用してフィールドを破り、ブライカーで袈裟懸けに切っており、
『しかし才人へ強い信頼を寄せているようだが……良き友故か?』
「それもこの間までなら当てはまります」
『この間まで……となりますと、玲也様と才人様の関係は今は違うのでしょうか?』
その最中、玲也と才人の関係をゼルガは尋ねた。彼らはプレイヤーとしての才人を良く知らない様子であり、玲也と才人が親友故であると見なしていたが、
「親友だけだった頃は既に過去の話、今は好敵手としての関係です」
「才人さんがプレイヤーになると言われた時は少し、いや結構心配でしたが……この間玲也さんと互角の勝負を繰り広げました」
才人は好敵手の一人として自分は見なしている事を玲也は明かす――プレイヤーとしての道を歩むものの、おぼつかない実力でだった彼は、戦いの最中腕を上げていき、互いに鎬を削りあう好敵手のような関係まで至ったのだと。親友だけでなく好敵手としての信頼を寄せていると断言しており、
『その口ぶりだと、玲也以上に腕を上げた事になるのかな?』
「さ、才人さんが玲也さんより強いかになりますと流石に……」
「いや、その通りかもしれません」
「ほぉ……」
玲也が才人を褒めちぎる口ぶりに対し、ゼルガは相応の信頼を寄せる才人が玲也以上の腕を持つのかと敢えて尋ねる。流石にその話となればリンですら躊躇するも――玲也は躊躇うことなくゼルガの問いを肯定しており、
「最も、俺も才人に先を越されてばかりではありません。追いつき、追いこし、追いこされるが好敵手としての繋がりと捉えてます」
『好敵手……玲也は私だと認めたのでは?』
「それに変わりはないです。ただ才人も、シャルも、プレイヤーのみんなも好敵手だと俺は思います」
その上で才人が、自分と互角の腕を持つプレイヤーだと見なし、友との慣れあいから好敵手として互いに競い合う関係になる――これは彼だけでなく、同じバグロイヤーを相手に戦い続けるプレイヤー達に当てはまると玲也が付け加えながら、
「元々ハードウェーザーが世間をにぎわせる存在でした。皆さん国々代表として互いにライバルとして競い合っていましたから」
『その競い合いが、天羽院に利用されていたとは思いませんでしたが……』
バグロイヤーと戦うハードウェーザーは、世界各国の代表との形で国々の象徴となり、世間でハードウェーザーの存在を熱烈にアピールがされ続けた。このハードウェーザーを駆るプレイヤーとして、各々が国の代表として、バグロイヤーと抗う事へ責任感を得ると共に、各国の面々と腕を競い続けた。最もユカが指摘する通り、バーチュアスグループの代表として天羽院が居座り、スポンサーとして電装マシン戦隊をコントロールするだけでなく、双方の戦乱を長期化させるまでに至ってしまったが、
「ですが、本当の敵が天羽院だと知って団結する事も出来ました。それは馴れ合いではない筈です」
『互いを信じ、認めるがゆえに腕を磨かんと競い合う――玲也が言う好敵手は間違いないのかな?』
天羽院という地球と電次元を股にかけ、己の復讐のために暗躍し続ける男がいた。彼の存在を認識した中で電装マシン戦隊は戦い続けている。志半ばで命を落とすプレイヤーがいようとも、彼らの分まで乗り越えるように戦い続けて今に至っていると。
「……アンドリューさんが俺にそう教えてくれました。あの人のお陰で俺はここまで来ています」
玲也としてアンドリューへの感謝の意をゼルガへ伝えた――世界各国のプレイヤーが馴れ合いではない、腕を競う好敵手たちの集まりであると。プレイヤーとして志願した自分が、最初にアンドリューへと挑み、一敗地に塗れた。この敗北があってこそ上には上がいるとプレイヤー達の世界を学んだ。その上で今まで必死に腕を磨き続けたからこそ、
『アンドリューとも互いに好敵手と見なしている……玲也は好敵手が多いのだよ』
「確かにそうですが、好敵手は一人だけと限らない気がします。貴方の好敵手になろうとする方が他にいる事も俺は知っています」
『……彼も随分と人となりが変わってきたようだが』
好敵手は一人とは限らない――玲也が自分だけの好敵手ではない事をゼルガ、は微かに羨むように述べると、当の本人は彼の好敵手になろうと望む者の存在を示す。ユカは察しがついたようにパートナーの顔を見れば、当の本人もおそらく誰かを気づいて感心の声を漏らすが、
『出来る事ならもう少し早く競いたかったのだよ。今の彼ならば良き好敵手の筈だよ』
「もう少し早く……この戦いが終わったらではないのですか」
『戦いが終われば、ほぼすべてが終わるとも言えますが……』
『誰かが、誰かが責任を取らないといけないのだよ、この戦いそのものに対して皆の為に……』
生涯の好敵手はただ一人――ゼルガがそのように見なす背景として、彼には戦いを終えてからの時間が僅かであると捉えているためであった。ユカと顔を見合わせながら一抹の儚さや、寂しさをかみしめており、
「責任ですか……この戦いを引き起こしたのはバグロイヤー、それも天羽院ではないですか」
「玲也さん! 大型の反応です!」
ゼルガの言葉の意味に対し、玲也はすべて把握しきれていない様子もあった。少し首をかしげていたと共に、彼女からはバグエスパーと異なる存在、それも見慣れぬ機体が強いエネルギー反応を示しているのだと。カイト・シーカーから送られた映像では銀色の飛翔体が、前方に突き出た二門のデリトロス・ガトリングを立て続けに掃射しており、
「囮として、大物をおびき寄せたのは上出来と……」
『見つけたぞ、見つけたぞ……羽鳥玲也!!』
「その声は……!?」
見慣れぬ機体乍ら、自分をフルネームで呼び続ける声に彼の目が見開いた。ここまで自分を打倒しようと固執する者となれば、ただ一人
『俺は、俺は! このバグウィナーでなぁ!!』
「まだ貴方は玲也さんの事に拘って……!!」
『悪いか!? オリジナルのお前が俺の全てを奪ったからなぁ!!』
「こうは言いたくないが……バグロイドだろうと俺に勝つ気か」
執拗に付きまとわれたニアでなくとも、リンでさえ彼がしぶとくも食らいつく様子には、嫌悪感を露わにした。それでも玲也に非がある様に開き直る彼の様子に、玲也もまた辟易とする。ハードウェーザーではなく、バグロイドに愛機が格下げとなれば無謀も良い所と評しており、機体のスペックで勝敗の有無を触れる辺りは彼らしからぬが、
『俺を戦いに駆り立てたのはお前だ! シーラもそれで……!』
「その敵討ちのつもりか……くたばっていないなら他に生き方というものが」
『黙れ! 俺はもうガレリオではない! バグウィナーなんだよ!!』
――既にガレリオはガレリオではなくなっていたのだろう。ウィナーストのような自分たちをスペックで圧倒し続けたハードウェーザーではなく、上半身だけのような出来損ないのバグロイドにされてまで、なおオリジナルを超えんと戦い続ける様子へ僅かに憐れみを覚えたかのような表情を浮かべた。アサルト・キャノンを牽制がてらに放てば、バグウィナーの展開したフィールドに弾かれるものの、
「すみません、少しの間頼めますかか?」
『あのバグロイドと決着をつけるつもりだね、玲也も大変だと』
「……せめて最期だけは、すぐにケリはつけます」
本来の囮に徹する役割を、玲也は少しの間ゼルガに任せると決めた。彼もまた苦労を強いられているのだと労いの言葉をかけつつ、ゼルガは意を汲み取って快諾した直後
『俺がこの手で殺してやる! そしたら俺は……』
「……最後の最後まで、やむを得ない」
カイト・シーカーをバックパックへと接続するとともに、ネクストは空高くバグウィナーめがけて飛び立っていった。ガトリングの銃身を向けたバグウィナーへと、ネクストは右手を突き出し、
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「カーチェイスにて、ネクスト、リキャストが交戦状態に入りました!」
「総力戦にはいったようだね……」
ネクスト、リキャストが戦闘へと突入した――クリスの報告を受けると共に、エスニックは険しく眉を動かす。サブモニターでは四方にて戦闘へ突入した突入した状況が写されており、
「シャル君たちは超常軍団か……どうなるかのう」
「博士、俺達が弱気になってどうするのですか、そりゃ気持ちは分かるんですけどね……」
その中でブレーンが懸念する事としてヴィータスト――シャルというよりも、ウィンのメンタルが不安定な点にあった。テッドが彼の心中を察しつつもクルーとして弱気は避けるべきだと促しており、
「ウィン君も作戦の一角を担っている自覚はある筈だ。アンドリュー君に負担をかけられない事もな」
「あいつは投げ出しませんから……本当でしたら、俺が早くバグロイヤーに乗り込んでやろうと思いますけどね」
「……ゲイン君たちに守りは固めてもらっているが、万が一がないとも言い切れない」
ウィンの今の胸の内に対し、アンドリューはエスニックに同調しつつ、手が空いた自分がバグロイヤーの本陣へ殴り込む事も出来るのだとぼやく、決戦の場において手を持て余している状況が彼として物足りない想いをしているものの、エスニックは万が一の事態を触れると共に彼を踏みとどまらせる。これに少しため息をつくような仕草を返すものの、
『ゼルガ様からリタさんの件は既に聞いています。私たちで必ずしも防ぎきれるか分からないですが……』
「ったく、あいつも余計なお節介しやがってよ。まぁそうなったらなったで……おわっ」
『きゃぁぁぁぁぁっ!!』
ゼルガの命により、ゲイン達デルタ・バックラー隊がドラグーンの護衛へと回されていたものの、アンドリューとして、自分を戦わせない意味合いもあるゼルガの配慮を余計なお節介だと捉えていた。その傍らで万が一の時に自分が出れば良いのだと、好機としても見なしていた所――左舷を基点としての衝撃がドラグーン全体へと襲い掛かる。アンドリューも思わずバランスを崩した時に、メローナの悲鳴が上がり、
「メローナ!もしかしたら……!!」
「ドラグーン上空に、反応あり……ハードウェーザーと思われます!!」
「対空防御ミサイル、撃つじゃん!!」
ミカが狼狽を見せたとおり、左舷はメローナがエンジンを直接制御していたオール・フォートレスの左舷であった。エルがレーダーで突き止めれば、ドラグーンの真上から雷撃を放った相手の姿があった――鬣を棚引かせ、金色の甲冑と共に威厳を見せつけようとする相手を彼女は、モニターが示した信号の様子からハードウェーザーを見なしており、
『この時を、この時を待っていた。ドラグーンにハードウェーザーが出払っているからだ!!』
「……また、てめぇか!」
『――鋼鉄将軍ハインツ、このゴルドストと共に電装マシン戦隊へ勧告する!』
ハードウェーザー・ゴルドストをもってドラグーンを攻める――プレイヤーとして前線へとマイデルハインツの声は威厳を保ちつつ、冷徹な姿勢を崩す事がない。アンドリューとしても忘れる筈のない相手だが、
『イーテストとの決闘を申し出たい。これを聞き入れるならば、ドラグーンを沈めるつもりはない』
「イーテストじゃと……!」
「おいおい……てめぇと勝負すりゃあ、ドラグーンを救えるのかよ。何かのジョークかよ」
ハインツとして、猶更アンドリューへの因縁に固執している様子であった。ドラグーンを襲撃したのも、そのものを沈める事よりもアンドリューを決闘の場に誘い出そうとする事を狙いにしているのだから。
アンドリューとしてこの戦争のさなかで、わざわざ自分たちに有利な決闘の話を持ち掛けていくあたりで、彼の話を疑い半分で接していたものの、猛者を相手にするからか、声のトーンがどこか上がっているようであり、
『ハインツ様に二言はない……が、申し出を反故にした場合はどうなるか』
『まさか……アオイ!?』
追随するようにして、アオイがハインツに従うべきだとドラグーンへ要求に従うべきだと促した。彼女の声をゲインが聞いて目の色を変えると共に、
『アオイですと、確かゲイン様の!』
『弟気味のキース様を手にかけた……ゼルガ様の恩を仇で返し』
『よりによってこうも私たちの前に立ちはだかるるなど!』
『落ち着け! お前達が先に出てしまえば!!』
かつてアオイはゲノム解放軍へ降伏しながらも、結局バグロイヤーへ出奔した。それだけでなく実弟のキースを殺める事までしでかした彼女は、既にゲノム解放軍の敵同然の相手ともいえた。ゲインの制止を聞かずして3機のデルタ・バックラーが飛び出していく。
『キース様の仇だと分かっていて!』
『今更私たちの前に現れたのか……なっ!!』
デルタ・バックラーが2機ライフルを連射して相手を牽制しつつ、最前列の1機がエッジの二刀流を振りかざすものの――ゴルドストが右手を突き出すと共に高出力のプラズマを生成して相手の接近を阻んだ。この見えぬ力に阻まれた上で、すかさず左手が繰り出された途端、クアトロ・バックラーのエッジを砕き、相手の腹部へと指をめり込ませて、
『ゼ、ゼルガ様、ゲイン様……!!』
『こ、こうも簡単に……!!』
同時に左手からエネルギーを放出する形で、デルタ・バックラーの動力炉へ引火させる形で四散させてみせる。早々に1機撃墜されると共に他の2機が直ぐに後退するものの、人差し指から精製したサンダーボルトが直撃した1機は、地へと墜ちていくだけだった。
『出来る事ならこれ以上の被害を望まないが……イーテスト現れないならばやむを得ない』
『……私たちで勝てるとは到底思えないが』
ハインツとして、イーテストを狙う為にデルタ・バックラーを1機ずつ始末しておびき寄せようとする事へと方針を転換する。イーテストを電装させる事のリスクが計り知れないと、戦いで一矢報いる事が出来なかろうともゲインは他の3機を庇うように最前列、真っ向からゴルドストへ立ち向かおうとするも、
「俺はここにいらぁ! てめぇの相手ぐらいなんでもねぇ!!」
「アンドリューさん!? 前に出たい気持ちはわかりますけど!」
「だったら、俺を前に出せってんだ! それがてめぇの望みだしよ!!」
片っ端からデルタ・バックラーの面々が犠牲になろうとしている。この事態に直面すると共に、アンドリューが思わずブリッジのマイクをクリスから奪う。すぐさまブリッジクルー耳を防ぎたくなるほどの大音量で怒鳴りつけるように叫ぶ。
『……その声を待っていた。攻撃の手を今は止めよう』
『攻撃するな! 私たちにできる事はただ……』
アンドリューから決闘を了承する声を聴いた途端、ハインツは直ぐに攻撃の手を止め、両手から展開したエネルギーフィールドで身を守る姿勢に入る。クデルタ・バックラーの面々が何発かライフルを展開させるものの、あっけなく弾かれるままに終わる結果もあり、ゲインは無意味な抵抗であると早々に判断した。その傍ら既に自分たちがゴルドストを止めることが出来ない非力さを苦々しく思ってもおり、
「アンドリュー君! リタ君の事を考えるとじゃな……」
「博士がもう何を言っても止められないですよ……そうだね」
「すみませんね、こうもプレイヤーとしての血が騒いじまいますと」
やはりブレーンが早々にアンドリューの出撃を止めようとしたものの、彼の制止が無意味であるとエスニックは彼を出さざるを得なかった。最悪このドラグーンを狙うであろうゴルドストを止める事が出来るのは、既にイーテストしかいないのだから
「君がそれでも行くというなら止めないけど――責任は重大だよ」
「大丈夫ですよ将軍。俺だってどういう意味か分かってますから」
「こうは言いたくないけどね、こうでも言いたくなるほどだよ」
「しっかり肝に銘じますよ、おいリタ!」
アンドリューが自ら前線へ躍り出る事を望んでいる姿勢も踏まえた故か、エスニックは彼が出る事を望んでいるならばと、彼の意向を汲んでの命令を出したとの体裁をとった。戦いへ赴く彼としてもエスニックの胸の内を理解したかのように、軽く笑いながらアラート・ルームへと戻ると共にパートナーへその時が来たことを告げる。
「待って! リタさんじゃなくてもあたしが空いてるんだし!」
「あたいに気を遣ってくれるのは嬉しいけどなー、ニアにはがきっちょがいるんだしよー」
「そういうこった。それにおめぇが今出ちまったら、玲也の負担も大きくならぁ」
アラート・ルームで一人待つニアはアンドリューの出撃に待ったをかける。厳密にはリタに代わり自分が出動すれば良いのだと触れるものの、二人は揃って却下した。仮にブレストがこの場で電装してしまえば、マルチブル・コントロールによる玲也の負担が増大してしまうとの点が問題視されており、
「それに俺ですら、手を抜けねぇって言ったろ?」
「だから、アンドリューさんとしたらイーテストのほうが良いと」
「話が早いと助かるな―。スペックよりやっぱどれだけ慣れてるかなんだよなー」
「何、俺らが出るなら決まってらぁ! 玲也達の手を煩わせはしねぇからよ!!」
アンドリューとして、既に交戦状態に入っている玲也達へ余計な手を煩わせる事をないつもりであった。二人は決意を胸にシューターへと身を乗り出していくが、自分たちを止めようとするニアの制止も敢えて聞かないふりをしていた。
「……と言ったけど、あたいらでも勝ち目あるかなー」
「バーロー、弱音はいてどうすんだよ。共に生きるか死ぬかのどっちかしかねぇだろ!」
目配せを交わしながら、囁くように互いはゴルドストを相手にしての勝算を触れていた。アンドリューとしても半ば博打に出るような勝負であり、勝つか負けるかのどっちかしかないと触れた後に先にシューターへ突入したものの、
「どっちかかー……それはそれであたいも不満じゃないけどさー……」
“生か死か――それは目の前の敵に対してだけでなく、既に己の余命があと僅かであるからかこそ彼女は戦いへ赴く前に最後の選択を下しつつあった。その最後の選択が来ない事を願いつつ、腰元に備えたポリスターに目をやりながら彼女もまた戦地へと今赴いていく――この物語は若き獅子・羽鳥玲也が父へ追いつき追い越すとの誓いを果たさんと、抗いつつも一途に突き進む闘いの記録である”
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