38-3 激烈アメリカ大陸! 鋼鉄軍団を打倒せよ!!

『これなら、ビグラッパーも届くっぺよ!!』


 PARアメリカ本部にて、空から迫る鋼鉄軍団を相手に、サンディストがようやく一矢報いろうと動き出した。これもバックパックを損傷し上空で失速、墜落しつつあったバグストライカーならかろうじて射程が届くが故。蛇腹状の両手をビグラッパーとして展開させ、はたく様に掌を叩きつけ、追い討ちを受けて無力と化した相手へと、ストリーム・バズーカを見舞っており、


『これもラディ様やアラン様のおかげですぞ、飛べない私たちへ回してくださって』

「まぁ、折角出てきたんだからなー、活躍してもらいたいからよー」

「そういうわけだってのによ……ロクマスト ! 何ボーっと突っ立ってらぁ!!」


 ヒロが触れる通り、フラッグ隊およびライトウェーザー隊の尽力があって、バグロイドの飛行能力を削いだうえで地上のハードウェーザー部隊が迎撃へ回るフォーメーションが成り立っていた。ただサンディストと異なり、特に戦果を挙げてないロクマストへとアンドリューが檄を飛ばすと、


『よ、余だって出たからには活躍はしたいが……』

『シーカーがやられちまったからなぁ、ラグ坊で間に合ってるというか、何というかなぁ……』


 無論ロディとして、出ても活躍の場がない事を快くは思っていない。ただ海原が存在せず、ビーム兵器を要するトート・シーカーも破壊されたとなれば、サンディストへのアドバンテージは特に見当たらない。地上から遠近問わずに動く彼に出番を取られており、


『ラグレー、その…… 余も出ているのだぞ! 余を忘れてもらっては……』

『何言ってんだべか? ロディの兄ちゃんはロディの兄ちゃん、おいら忘れる訳ないっぺ!』

『い、いや。余が言っているのはだな……』

『だったら俺が仕留めてやる!!』


 思わずラグレーへ自分の出番が危ういと判断したのか、彼へと自分の取り分も残してほしいとロディは頼むが……彼の口ぶりをラグレーは“そのまま“捉えて答えていた。そのままの回答が大分見当違いであるとロディが少し呆気にとられた途端、彼の目の前に地上へとバグストライカーが降り立つ。勢いよくデリトロス・ベールを振るいあげた途端、


『っと、忘れてないのはありがたいけどよ!』

『余が他人に渡す首などないぞ……!!』


 とっさにロクマストはアリゲーター形態からの変形を試みる。それに伴い前方へと突き出たワニの口を駆使し、振り下ろされたベールの刃へと噛みついてみせた。所謂ガブリ・マウスターから、首を振るとともにバグストライカーの体勢を崩させる。さらに体を回転させ、鏃が設けられた尾でもあるセベールスを力強く叩きつけて追い討ちをかけた後、


『や、やめろ! こんなことで俺は、あぁぁぁぁぁっ!!』


 隙を突かれて怯んだバグストライカー目掛けて、ロクマストは敢えてアリゲーターのまま、底部に設けられた無限軌道でひき潰す荒業へと出る。パイロットの断末魔が響いた直後、バグストライカーは爆破四散を起こし、


『ふん……汝ごとき、これで十分だ!』

『これで十分ってなぁ、ラグ坊のマネじゃねぇか』

『真似も何も、立派な戦法の一つではないか。これはエネルギーの浪費も……ぬおっ!!』


 アグリカにサンディストの真似だと突っ込まれつつ、勝てばよいのだとロディはどや顔で豪語するが――今度は彼が生じさせた隙をつくかのように、サジタリウス・レネードが投げつけられていく。避ける間もなく閃光弾を幾多も叩きつけられるとともに、今度はレールガンの弾頭が次々と浴びせられ、


『こんな時に抜け駆けをするとは……』

『ハードウェーザーとまともにやりあうな! 俺が止めている間に撃つんだ!!』


 先ほどのパイロットが独断で血気に逸ったのだと指摘しつつ、降り立ったバグストライカーは白兵戦に持ち込むのではなく、サジタリウス・レネードを投げつけてロクマストの動きを止め、バグガナーのレールガンでハチの巣にする戦法を取る。1機を相手に複数で寄ってたかって攻める事がベターと捉えていたようだが、


『ぐおっ……!!』

『確かに賢明な判断かもしれませんが……注意が疎かですと命とりですぞ、若!』

『ダイノミック・スタンプだべ!』


 すぐさまバグストライカーの背中はリベンジャーホーンへと貫かれ、あっという間に果てていった。トリケラ形態としてサンディストは堅牢な装甲を生かしての突撃戦法――本家ともいえるダイノミック・スタンプを発動させており、


『ここから逃げるぞ! 迫る前に、ぬおっ……!!』

『まだ飛べたかと思われますが、わざわざ降りてきて攻めますとは……律儀といえば良いのですが』


 サンディスト相手に地上で相手を務める事は無謀に等しい。直ぐバグガナーが飛び上がろうとしたものの――飛び上がるまでにサンディストが追い付いてしまった。両手のバズソーを楯としてダイノミック・スタンプによる突撃を食い止めようとしたが、無力のまま逆に両足からのソードガンで踏みつぶされる結果であり、


『おらぁ! 俺もいること忘れんじゃねぇぞ!!』


 さらに宙へ逃れようとしたバグガナーへ向けて、サザンクロス・バディが待ち構えてもいた。スパイ・シーズからのミサイルランチャーと併用して、左手で抱えるガーディ・ガトリングを掃射させてハチの巣にした後、


『俺は今むしゃくしゃしてるからな! ステファーとあいつの為にもなぁ!!』

『アランさん落ち着いて! 気持ちはわかりますけど』

『兄貴を前にステファーで分かってたまるかよ!!』


 ルリーが窘めるものの、バグポセイドン代表相手に満身創痍となったオーストラリア代表へ顔向けは出来ないとアランは吼える。この戦いが敵討ちでもあると捉えている様子でもあり、


『生憎こうして飛べるからよ! ユーストの穴ぐらいなぁ!!』

『この! ライトウェーザーの分際で……!!』

『危ない……逃げてください、隊長!!』


 サンディストやロクマストの為に、ユーストの代わりとなる航空戦力に自分はなりうるのだとアランは豪語していたが――ハードウェーザーに匹敵するとの口ぶりに刺激されたのか、バグストライカーが畳みかける。ベールを手にして迫る相手の様子に部下からは退くように促され、彼の顔つきが多少ゆがむとともに、


『でやぁぁぁぁぁぁっ!!』


 サザンクロス・バディの手にしたソードガンは、出力ではベールのビーム刃より大きく劣る。にも関わらずアランは一時的に食い止める事は可能であると、ビーム刃を展開させては逆にかき消される結果となったが――右足に設けられたガーディ・エッジの刃が懐へと入り込んでコクピットを貫いていた。無防備のまま隙を見せざるを得なくなった相手へと、レールガンの弾頭が直撃してバグストライカーが果てるが、


『アンドリューさんよ! 俺に構ってる場合じゃないだろ!!』

「わりぃわりぃ、ちょうどこっちは二人分だしよ」

『アランもアランだ。空の要として力任せになるな』


 イーテストがバグストライカーを仕留めた様子に、少なからずアランは不本意でもあった。アンドリューとしてはそれだけの余裕が自分にはあったと苦笑し、ラディもまた彼が血気に逸っていると窘めているようだが、


『アンドリュー……くれぐれも無理だけは』

「わーってらぁ! こいつにくたばる俺な訳ねぇだろ!」

『いや、俺だけではなくお前も……』

『隊長こそ、何ボーっとしてるんすか!!』


 同時にイーテストが電装されている様子がラディとしては気がかりでもあった。アンドリューへ珍しく躊躇したような態度で接していた所、最前線で隙を見せていると逆にトム機へと助けられる結果となった。リニアガンで怯んだバグガナー目掛けて、ローカライ・クローをスパイラル・シーズがさく裂させ、至近距離からのガーディ・ファイヤーで焼き払って見せるが、


(玲也次第でクロストを電装させることもできた……あいつ相手にイーテストを選んだのかもしれないが、何だ……?)


 ただ、ラディとしてイーテストで電装している状況へ嫌な胸騒ぎがしていた。バグアーサーを相手にイーテストは、バックパックとしてサンディストを連結させた所謂イーテスト・ブルとして応戦しており、


「悪いなー、本当はあたいが制御するところだけどよー」

「大丈夫ですよ! ブルの制御は慣れてますから!」

「なら遠慮はしねぇ! 一気に切り込んでやらぁ!!」


 リタの顔に脂汗が微かに垂れるものの、イチ達が気づいていたかどうかは定かではない。ただコンバージョンした分制御が複雑になるからとの理由で引き受けていただろう。

 何れにせよイーテストは両手のゴッドホーク・ウェートを振るいながらバグアーサーへと切り込みをかけていく。ベールを振るう相手へ実体刃のホークでは不利といえたものの、質量を生かした豪快な大振りをフェイントとして、内蔵されたレールガンでベールを構成する実体刃目掛けて狙い撃つ。


「おうおう、娘さんの仇なら討ってみなってんだ! それでどうにかなったら苦労しねぇけどな!!」

『レーブンの仇……その感情は否定しない!』


 アンドリューはハインツを一笑に付すように挑発を交えると、彼はその挑発へ敢えて乗る様に、胸部からのデリトロス・ブレスターを一斉に放つ。これで刃毀れが生じたゴッドホークを投げつけて間合いを取るが、


『私をその気にさせた落とし前はつける……このサンダーボルトでな!!』

「やべぇ! アンドリューさんでもあれ受けたらよ!!」

「バーロー……!俺にはこれがあるからよ!」


 バグアーサーが必殺拳といえるサンダーボルトを繰り出さんと、反撃を開始した。ハインツの希薄に才人が思わずものおじしていたものの、アンドリューは面白いと笑みを浮かべつつ、グレーテスト・マグナムを引き抜いていた。

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