談話7:かみさま

 カナリヤたちを見送り、カガミはシラユキと数日過ごしたあと。狩りをするため、霧深い霊峰を縦横無尽に進んでいた。

 両腕を覆う鱗の本来の主は、霧を操る銀竜だ。銀竜は、霧の中にいれば狩りなどする必要もなかった。『半端者』であるカガミはそうもいかない。

 あちこちを疾風はやてのように移動していると、見慣れた景色が目に入る。


 銀竜と初めて会った、山深い中にある開けた場所。


 銀竜の巣である急峻な岩肌へと移動して以来、数えるほどしか訪れていなかった。

 あれから三百年以上経ったというのに、植生も含めてほとんど変わりがない。


「ギンのやつ、どうしちゃったんだろうねー」


 カガミは呟きながら頭をかく。

 口ではそう言っても、薄々わかってはいるのだ。竜とて生き物、いつかはその時が来るだろうと。

 ふっとひとつ息を吐き、カガミは霧に覆われた空を見上げる。そしてふと違和感を覚えた。


 霧はこんなに濃かっただろうか。


「ちょっとちょっと。留守が長かったんじゃない?」


 言葉とは裏腹に、カガミは満面の笑みを浮かべながら、上空から近づいてくる影を出迎えた。

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